研究課題/領域番号 |
23320176
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会 |
研究代表者 |
岡村 勝行 公益財団法人大阪市博物館協会, 大阪文化財研究所, 研究副主幹 (70344356)
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キーワード | パブリック・アーキオロジー / 考古遺産 / 埋蔵文化財 |
研究概要 |
初年度は、日本の考古学・考古遺産マネージメントの特質、構造、原理について、客観的に考察・解明するために、研究に必要な基礎的なデータの収集を中心に活動を行った。具体的には、近年の欧州の調査研究体制、考古学者の国際比較研究(DISCOプロジェクト)や、『考古学と経済危機』に関する報告書(2010)を分析し、欧州を中心にデータを集めるとともに、比較項目の検討や相応する日本の資料の収集を行った。 国内外の研究協力者を交え、現代社会における考古学の現状、国際比較の視点の検討を中心にワークショップを開催する予定であったが、欧州の動向に詳しい海外研究者との日程が合わず、次年度に送ることとなった。ただ、「考古学と現代社会」に関する国際的な動向、国際比較研究による日本の状況解明の見通しについては、考古学研究会において研究報告を行い、日本版パブリック・アーキオロジー研究の醸成に努めた。また、同時に考古遺産マネージメント、パブリック・アーケオロジーの主要論考のリストアップ化を行い、主要文献を収集し、最新情報の獲得に努めた。さらにアジア地域の考古学・埋蔵文化財マネージメント分析のケーススタディとして、韓国の現地調査を行った。その結果、近年、同国では開発事業の急減から、調査財団の存続に厳しい状況が生じており、市民向けの現地説明会の増加、考古学体験施設の検討など、現代社会における考古学の提示に対する取り組みの機運が考古学界全体で高まっている状況を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度については、11月下旬の途中採択であり、実質の研究期間が三分の一しかなく、現地調査を十分に行うことができなかったことや、当初予定していた海外研究者の招聘がかなわず、ワークショップの開催が順延となったこともが主たる理由である。 しかし、繰越制度の活用により、翌年度に考古遺産マネジメント、パブリック・アーケオロジーに関わる海外研究者Kenneth Aichison氏、Sophie Jackson氏、Don Henson氏を招聘することが可能となり、その研究発表ならびに日本研究者との共同研究により、日英の国際比較研究を進め、さきの遅れを一定吸収することができた。
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今後の研究の推進方策 |
パブリック・アーキオロジー研究の先進地である英国の現地調査や、欧州の考古遺産マネージメントに詳しい研究者とのワークショップを通じて、国際的な動向を把握に努めつつ、国際比較の項目、基礎データを整備する。さらに近年、東南アジアや先述した韓国でも「パブリック・アーキオロジー」が考古学界に登場するが、これらに従事する考古学者とのネットワークを構築しつつ、日本の特質をアジアにおいても可視化させる。「パブリック・アーキロジー」およびその狙いが一般に理解されやすいように、概説書作成の準備を始める。
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