研究課題/領域番号 |
23320176
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会 |
研究代表者 |
岡村 勝行 公益財団法人大阪市博物館協会, 大阪文化財研究所, 研究副主幹 (70344356)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | パブリック・アーケオロジー / 考古学 / 考古遺産 / 埋蔵文化財 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
研究2年目は初年度に続き、各国の考古遺産マネジメントに関わる基礎的なデータの収集を行い、海外研究者を含む研究発表やワークショップによって、国際比較的研究を進めた。なかでも東日本大震災と埋蔵文化財(考古遺産)の問題、遺跡における災害痕跡研究の役割について、考古学と社会と関わりを考えるパブリック・アーキオロジーの日本的特質を浮き彫りにする鍵と捉え、その成果を積極的に国内外に発信した。 具体的な活動として、7月に英国遺跡調査機関の実態調査、8~9月に海外研究者Kenneth Aichison氏、Sophie Jackson氏、Don Henson氏による研究発表ならびに日本研究者のワークショップにより、パブリック・アーケオロジーの国際比較研究を進めた。これらの調査研究と初年度の資料分析と合わせ、中間段階の研究成果として、研究協力者の松田陽氏と『入門パブリック・アーケオロジー』として公刊した。書籍は朝日新聞2013 年2月25日付「パブリック・アーケオロジーで見る日本の考古学」、毎日新聞2013年2月28日付「社会との関わりで考える考古学『パブリック・アーケオロジー』刊行」などを通じて、広く社会に紹介され、この分野の研究の醸成に寄与した。また、考古学研究会第59回研究集会「遺跡・遺産・考古学 ~調査研究/マネジメントの検証~」について、岡村はコーディネーターとして、坂井秀弥氏(連帯研究者)、松田氏は発表者として、申請研究の成果を活用して、発表準備を進めた。 東日本大震災と考古学・文化遺産について、6月の東アジア考古学会国際会議(SEAA5)、7月の英国ノーフォーク考古学会、1月の世界考古学会議(WAC-7)で研究発表を行い、その成果の一部について他の研究者と連携し、国際的な雑誌「アンティキティ」において公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パブリック・アーケオロジーの文献、実践(素材)の資料収集は進む一方で、その分析、整理がやや遅れ気味である。海外研究者の招聘などにより国際比較を進め、日本的特質の抽出についておおよその見通しを得ているものの、比較項目の一覧表化など、その可視化の作業がやや不十分である。一方、申請研究に関する研究発表やワークショップを適宜実施し、「パブリック・アーケオロジー」が雑誌、メディアなどに取り上げられることが増加し、日本の考古学界において、その研究の内容・意義の浸透に一定の役割を果たしている。
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今後の研究の推進方策 |
国際比較研究の要となる、考古遺産マネジメントに関わる基礎資料を継続して着実に蓄積させるとともに、個々の資料、比較項目の整備を図り、日本的特質をより明確にする。最近、開発に伴う遺跡調査(contract archaeology)が考古学研究に与えた影響について、ブラジルで国際会議の開催が予定されるなど、国際的関心が高まり、現代社会における考古学のあり方の議論が再燃する状況にある。こうした動向を追跡しつつ、同種の国内の議論の活性化を図るため、海外研究者の招聘を含む共同研究を推進する。 「考古学と現代社会」の最前線にある、東日本大震災に関わる埋蔵文化財調査、考古遺産マネジメント、災害痕跡研究の動向を把握し、国際比較研究を通じて、その特質を明らかにするとともに、研究成果の国内外の発信に努める。
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