研究課題/領域番号 |
23320176
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研究機関 | 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、 |
研究代表者 |
岡村 勝行 公益財団法人大阪市博物館協会(大阪文化財研究所、大阪歴史博物館、大阪市立美術館、, その他部局等, その他 (70344356)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 考古学 / 考古遺産 / 遺跡 / マネジメント / パブリック / コミュニティ / 教育 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、各国の考古遺産マネジメントに関わる基礎的なデータの収集と分析を行い、海外研究者を含む研究発表やワークショップによって、国際比較的研究を進めた。なかでも東日本大震災と埋蔵文化財(考古遺産)の問題、遺跡における災害痕跡研究の役割について、考古学と社会と関わりを考えるパブリック・アーキオロジーの日本的特質を浮き彫りにする鍵と捉え、その成果を積極的に国内外に発信した。 具体的な活動としては、4月考古学研究会第59回研究集会「遺跡・遺産・考古学 ~調査研究/マネジメントの検証~」において、連携研究者、研究協力者とともに申請研究の成果を活用して、研究発表を行った。9月に連携研究者、研究協力者による英国の実態調査、11月にはスウェーデン・ヨーテボリ大学クリスチャン・クリスチャンセン氏による研究発表「遺産論における理論と実践」ならびに日本研究者とのワークショップ(50名参加)、また、翌年1月には欧州15カ国の研究者が参画する「コミュニティ考古学のための新しいシナリオ(Nearch)」で発表を行い(YouTubeにて閲覧可能)、考古遺産マネジメント、パブリック・アーケオロジーの国際比較研究を深化させた。被災地の考古学についても、国内外で発表し、Nearchでは防災に向けて社会発信する、海外の津波痕跡研究の情報を得、国際的な連携の糸口を掴んだ。また、6月オックスフォードで開催された第3回Nearchにも参加し、とりわけ「考古学と芸術」に関する日欧の情報・意見交換を行った。 考古遺産マネジメント、考古遺産教育の日本的特質に関する研究成果については、『世界考古学事典』に論考を掲載し、海外発信した。また、考古学とメディアの関係について、これまでの研究成果を活用して、古墳時代の取り扱われ方に主眼を置いた論考を一般図書で公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外の考古遺産マネジメント、パブリック・アーケオロジーに関わる、多様な資料の蓄積は進む一方で、資料分析、整理、データの標準化がやや遅れ気味である。海外研究者の招聘などにより国際比較が深化したことにより、日本的特質の抽出について、見通しを得ているものの、比較項目の一覧表化など、その可視化の作業がやや不十分である。 一方、申請研究に関する一般図書の刊行、研究発表やワークショップを適宜実施することによって、「パブリック・アーケオロジー」が雑誌、メディアなどに取り上げられる機会が増加した。日本の考古学界、考古遺産マネジメントの世界(埋蔵文化財行政)において、考古学と現代社会をつなぐ調査研究の主導、国内醸成に一定の役割を果たしているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる今年度は、国際比較研究の要となる、考古遺産マネジメントに関わる基礎資料の補足とともに、個々の資料、比較項目の標準化を図り、日本的特質をより明確にするリスト作成に力点を置く。なかでも資料・情報の入手が比較的容易である、英国の資料の補填を中心に進めるため、現地資料調査、海外研究者との共同研究を行い、報告書を準備する。欧州の同様の研究、その動向を捉えるため、「コミュニティ考古学のための新しいシナリオ(Nearch)」会議、研究発表に引き続きに参画し、情報収集に務める。 また、考古学と現代社会の最前線にある、東日本大震災に関わる埋蔵文化財調査、考古遺産マネジメント、災害痕跡研究の動向を把握し、国際比較研究を通じて、その特質を明らかにするとともに、研究成果の国内外の発信に努める。
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