研究概要 |
当初計画において23年度は予備的調査の実施と位置づけており,個別の対象地域においてカウンターパートとの接触や基本的資料,情報の入手に努めた。また,それに先だって7月には研究参加者を集めた研究打合せを山口大学にて実施した。個別の対象とは具体的に,荒木は海外共同研究者である中国科学院の王と共に中国河北省の有機野菜栽培企業等を訪れ,基礎的な資料の収集を行った。梅田はニュージーランド南島を訪れ,乳用牛,肉用牛,羊,鹿などを飼養する農場,ワイン用ブドウ農場を含む果樹園やワイナリー等において地域農業の調査を行うとともに,オタゴ大学地理学部を訪問するなどカウンターパートとの調整を行った。大呂はオーストラリアにおけるWagyuの生産と消費拡大に関する調査を実施したほか,ニュージーランド及びトンガにおける対日輸出向けカボチャ産地の動向やそれをめぐる政府や企業などの対応の把握に努めた。古関は台湾のマンゴーに着目して,輸出業者の市場開拓の動きや,生産者と輸出業者の安全管理や品質への取り組みについての調査を実施した。また,農業経済学の立場から辻村はコーヒーの価格形成に着目して,第1次レジーム,第2次レジーム,第3次レジームを解釈し,価格形成の主体が多国籍企業や投機家となり,価格の低迷や変動が大きくなっていることを示した。いずれも当初計画の通り,24年度以降の本格的な調査に備えた予備的な調査と予察的な考察に取り組んだ。また,各調査地においても現地のカウンターパートとの良好な関係を築くことができており,24年度以降の本調査も円滑に実施できると考える。 これまでの研究の成果に関しては,本科研参加者の連名で学会発表を行うとともに,荒木が国際会議1件を含む都合4件の,辻村が1件の学会発表を行った。論文に関しては荒木が4件,辻村が2件の成果を得たほか,辻村が編著書の中の1章としての成果を2件得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度が初年度であり,当初予定通り資料の収集や予備調査を行った。その結果,次年度以降の本格的な調査に備えて,基本的な資料や文献,人脈を確保することができた。このため研究計画は概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
23年度に実施した予備調査を中心とする成果を踏まえて,当初の計画通り本格的な調査を進める。具体的には荒木は中国,古関は台湾を中心とした東アジアを,梅田はニュージーランド,大呂はオーストラリアを中心としたオセアニア地域を主たる事例地域とする。その際,これらの当初設定した地域に加えて,東南アジア地域,さらにアジア・インド洋地域についても可能な範囲で検討を加えたい。本研究の目的とするアジア太平洋地域のフードレジームの理解の上で,極めて関連の深い地域だからである。また,辻村は引き続き学際的な立場からの検討を行うとともに,統計資料などをもちいた補完的な研究はそれぞれが実施する。また,調査に先立ち5月に研究打合せを行うとともに,成果の発表にもつとめる。以上,当初の研究計画を概ね踏襲しており,計画の変更や遂行上の問題点は特にない。
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