研究課題/領域番号 |
23320186
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
荒木 一視 山口大学, 教育学部, 教授 (80254663)
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研究分担者 |
梅田 克樹 千葉大学, 教育学部, 准教授 (20344533)
辻村 英之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (50303251)
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 准教授 (50370622)
古関 喜之 広島国際学院大学, 現代社会学部, 講師 (50531456)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地理学 / フードレジーム / アジア太平洋 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
それぞれの研究対象地域において現地調査などに取り組んだ。具体的には以下の通りである。 まず,東アジア地域に関しては,荒木が中国において調査を継続し,中国科学院の王研究員らと共同で中国における高付加価値野菜の生産とその問題点について検討した。加えて,国内での食の質に関わる分析に取り組むとともに,フードレジームに対する理論的検討および,本研究のインドに対する拡大にも取り組んだ。また,古関は台湾に焦点を当て,東アジアにおける農産物貿易体系について検討した。台湾にとって東アジアの農産物貿易の中で重要である伝統的な輸出農産物のバナナに着目し,輸出業者の市場開拓の動きや生産者および輸出業者の安全管理や品質への取り組みについて調査を実施した。 オセアニア地域では,梅田が平成25年1月3~9日に,オーストラリアにおいて現地調査を実施し,Fonterra社のオーストラリア本社や環太平洋諸国への食品輸出に取り組んでいる企業を訪問,聞き取り調査等を行った。また,平成25年3月16~22日には、ニュージーランドにおいて現地調査を実施した。農産物産地における実態調査のほか,Massey大学における資料収集等を行った。大呂も,日本の食料輸入に関わる海外の生産者,日本の輸入業者,消費者といった各主体に関する調査を行い,日本の食料調達の変化やそれに伴う地域の変化に関する分析を行った。 最後に学際的な立場から辻村は第3次フード・レジームの特徴の1つとして,農業・食料企業が環境保護,食品安全性,フェア・トレードなどの社会運動の要求を「サプライチェーンの品質検査」として選択的に受け入れることとらえその影響について分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた荒木と古関による中国・台湾という東アジア地域,梅田と大呂によるオーストラリア・ニュージーランドというオセアニア地域の現地調査が概ね計画通りに進展しており,1,2年目の現地調査の成果発表も徐々に形を表している。また,それと並行した理論的な検討などについても成果が得られ始めている。例えば 荒木の場合では,(1)中国河北省の調査から第3次レジームのひとつの鍵である良質農産物生産の中国における実態とその問題点,(2)アジア太平洋地域同様の秩序変化の中にあるインドの農村調査を踏まえたレジーム論の援用と研究地域の拡大,などの検討が進んでいる。同様に大呂の場合では,具体的に日本企業による海外での牛肉生産の撤退,国外でのWagyu生産・消費ブームの実態,日本企業の青果 物輸入の動向等について調査から,日本のポスト・開発輸入というべき変動を包括的に理解するための情報を得ることができた。また,辻村の場合では,フェアトレードが途上国生産者の生産・生活におよぼす影響について,自身のタンザニア・キリマンジャロ山中の小農民による複合経営を事例として分析,そのフェアトレードコーヒーを日本において普及するための課題について検討し,特に「社会運動の要求」との妥協点をいかに見出すかが,フェアトレードや第3次フード・レジームを確立させる1要件であることを確認できつつある。また,梅田や古関らも平成25年度の早い時期の成果報告を行う予定である。こうした点から研究は予定通り概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である本年度は,それぞれの地域での研究を続け,前年度までに実施した調査を補完するとともに,研究の取りまとめを行う。具体的には荒木は中国,古関は台湾を中心とした東アジア,梅田はニュージーランド,大呂はオーストラリアを中心としたオセアニアを主要対象として設定しているが,東南アジア地域やアジア・インド洋地域についても昨年度同様に取り組む。この地域の食料貿易のダイナミックな変化をとらえるという研究の主旨を踏まえたものであり,具体的にはオーストラリアWagyuの東南アジア市場への展開や,ニュージーランドFonterra社の中国市場への展開など,特定地域内の研究に留まらず地域間の側面での研究を推進する。同様にアジア・太平洋地域のみならず,アジア・インド洋地域についての研究の拡大にも積極的に取り組む。フードレジーム論によるアジア太平洋地域の解釈という本研究の目的に照らして,アジア・インド洋地域が持つ重要性が明らかにされつつあるからである。また,辻村は学際的な立場からの検討を行うとともに,統計資料などをもちいた補完的な研究はそれぞれが実施する。なお,年度の早い時期に研究打合せを行い最終年度の取り組みと成果の発表などについての調整を行う。 具体的な成果の発表の場として,2013年8月に京都で開催されるIGU(国際地理学連合)京都地域大会において,当該科研に基づくセッションを企画している。荒木がセッションを主催するとともに,報告者には研究分担者に加えて,海外研究協力者なども招聘する予定である。この国際会議が1つのまとまった成果発表の場ということができるが,併せてそれと前後する国際会議やその他の国内学会での成果の発表にも努める。
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