研究課題/領域番号 |
23320189
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩本 通弥 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (60192506)
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研究分担者 |
森 明子 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 教授 (00202359)
重信 幸彦 国立歴史民俗博物館, 研究部, 客員教授 (70254612)
山 泰幸 関西学院大学, 人間福祉学部, 准教授 (30388722)
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キーワード | 民俗学 / 民族学 / 文化人類学 / 歴史工房 / オーラルヒストリー運動 / 社会-文化運動 / 日常の語りアーカイブ / モッテ |
研究概要 |
初年度のため、主調査地のハンブルグの民俗学を取り巻く社会的概況の把捉に努めた。ハンブルグ大学における民俗学の教育カリキュラムの現況、同大学の民俗学研究所の運営システムや、同じフロアーにある民族学研究所との関係性、および民間のオーラルヒストリー運動の拠点である歴史工房との関係性等を調査したが、歴史工房など民間の市民運動を支える日本とは全く異なる、住民の基定的民主主義(社会・文化運動)のあり方に関し、深く学ぶ結果となった。 1民俗学の専門性の高度化もっとも驚かされたのは同じ建物にある民族学研究所との関係であり、学問領域の専門性の高さであった。ドイツ最古の民俗学研究所として1919年に市の歴史博物館内に設立された民俗学研究所は、2007年から名称を民俗学/文化人類学研究所と変更したが、文化人類学を付加することに対し、民族学研究所側の無対応が興味深い。日本では文化人類学は民族学(Ethnologie)とほぼ同義語と見られ、両者の親和性が高いが、ドイツでは文化人類学はアングロサクソン系の学問として、民俗学の方に専ら包摂される傾向にある。研究者の専門意識が高く、民俗学と民族学の両学会に属しているような者はほぼ存在せず、学際性の尊ばれる日本のような風潮よりも、まずその専門性が重要であって、他学問の新動向なども自らのディシプリンにいかに消化できるかが問われている。 2民間のオーラルヒストリー運動との関係性同研究所に構築されている「日常の語りアーカイブ」とも関連の深い、オーラルヒストリー運動の拠点である歴史工房(Geschichs-Werlstatten)を探査した。ハンブルグ市内には17の歴史工房があるが、最も活動の盛んであるオッテンゼンの歴史工房と、それを支えるモッテ(MOTTE)など社会―文化運動の実態や連関性などを主に踏査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者である岩本が緊急入院したため、約1か月分のフィールドワークが、5ヶ月後に延期になったが、それ以外は予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
主たる調査地としたハンブルグは、「ハンザ都市」(ハンザ同盟以来の都市国家の伝統を自負した称号)を自称した領主を持たなかった、古くからの国際都市(貿易港)であるため、諸民族との交流が極めて盛んであった。ハンブルグを把捉するためには、こうした多文化状況を視野に入れる必要があり、当初の計画にはなかったが、エスニシティ研究の視角を、急遽含めることにした。すべての諸民族文化やその混淆を捉えることはできないので、日本・中国・韓国の東アジア三国の、移民やその定着などの比較を、フォークロリズム研究から明らかにすることを目標に加え、次年度から中国や韓国の民俗学者にも研究協力者としての助言を仰ぐことにし、その準備を進めることにした。
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