研究課題/領域番号 |
23320194
|
研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
安井 眞奈美 天理大学, 文学部, 教授 (40309513)
|
研究分担者 |
飯島 吉晴 天理大学, 文学部, 教授 (30184344)
岩本 通弥 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (60192506)
つる 理恵子 吉備国際大学, 社会学部, 准教授 (20227474)
松岡 悦子 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (10183948)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 出産 / 育児 / 儀礼 / 生命観 / 中絶 / 水子 / サポート / ネットワーク |
研究概要 |
今年度の研究成果を下記3点を挙げる。 ①研究会開催:2012年6月2日、11月18日に研究会を開催した。6月は鈴木由利子が中絶と水子供養の関係を明らかにするため、水子地蔵建立に関して寺院等で聞き取りした成果を発表した。分担者の飯島吉晴は、胞衣と産婆の関係について、袋子に関する伝承と神聖視される一方で賤視される産婆の関係を、継続して追求すべき課題であると指摘した。11月は分担者の松岡悦子が、伝統的な社会では産後の養生を重視する文化があり、現代社会よりもマタニティーブルーズになる傾向が低いと発表した。研究代表者の安井眞奈美は、ミクロネシアのパラオには母系親族集団により妊産婦を支える仕組みがあったが、都市化の進む地域は親族の手助けが得にくい状況にあり、今後パラオでもマタニティーブルーズが生じるのではないかと指摘した。 ②産小屋調査:2013年2月15日~17日の日程で、科研メンバー10名による小浜・敦賀半島の産小屋調査旅行を実施した。犬熊・立石・色浜の産小屋見学し、色浜では産小屋使用者から当時の出産の様子を伺い、産小屋が現存しない白木地区では産小屋使用者6名から、出産の様子や産後の産小屋での過ごし方を伺った。これらの成果を冊子報告書「敦賀の産小屋調査報告」として刊行した。この他、福井県立若狭民俗資料館・御食国若狭おばま食文化館や白城神社・常宮神社・気比神宮・晴明神社などを見学し、産小屋習俗の他、福井県の民俗を総合的に理解するようにした。また昭和51年度調査の塩津三治著『立石半島沿岸地区を主とした敦賀地方の産育習俗』を『敦賀半島の産小屋・月小屋』として翻刻し、国立図書館や福井県の図書館・博物館、民俗学・文化人類学系の大学図書館へ配布した。 ③最終報告会に向けて:研究会や調査旅行の際、平成25年度10月に開催する最終報告会での、科研メンバーによる発表と報告書作成についての検討を重ねた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本科研では、「研究の目的」を達成するため、研究分担者および研究協力者が、3つの研究グループに分かれて、各研究テーマに取り組む体制で進めている。これまで、各自が各研究グループのテーマに沿ったフィールドワークを実施し、その成果を研究会で発表、議論を重ねてきた。研究の経過途中で、各自にフィードバックする方法により、「研究の目的」を順調に進めることができた。 当初は研究代表の安井が渡仏して研究協力者であるフランスの研究者と打ち合わせをする予定であったが、先方の都合により次年度に延期となった。 また先述した「研究実績の概要」にもあるように、科研メンバー10名で小浜・敦賀半島の産小屋調査旅行を実施し、報告書、翻刻資料集を刊行し、地元の博物館や図書館に寄贈するなど、当初の計画以上の成果を上げることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究の推進方策を以下に述べる。 ①最終報告会の開催:本年度は本科研研究課題の最終年度にあたるため、最終報告会を10月19、20日に開催する予定である。5月25日の第7回科研研究会では、研究発表のほか、最終報告会のプログラムおよび検討を行う。各自の研究テーマの進捗状況、またコメンテーターの人選、成果報告会の進め方などを決める。また、夏には研究代表者の安井が渡仏し、研究協力者であるフランスの研究者と打ち合を予定している。 ②補足調査の実施:各自が10月の最終報告会にむけ、研究課題のとりまとめを行う。それに伴い、補足調査を実施する。必要であれば10月以降にも補足調査を行い、研究報告書の作成にむけて準備を行う。 ③成果報告書の作成:10月に行う最終報告会の成果を、報告書として本年度末に刊行する予定である。研究分担者および研究協力者は、10月の発表内容を論文としてまとめ、12月末に研究代表者に提出する。研究代表者は12月~1月にかけて編集作業を行い、約30部の冊子を刊行し、国立国会図書館などに寄贈する。さらにその報告書を叩き台に、出版社と相談し、科研終了後に、商業出版する予定である。それにより、科研の研究成果を広く一般社会にも還元していきたいと考えている。
|