研究課題/領域番号 |
23330003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
葛西 康徳 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80114437)
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研究分担者 |
吉原 達也 日本大学, 法学部, 教授 (80127737)
西村 安博 同志社大学, 法学部, 教授 (90274414)
松本 英実 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50303102)
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キーワード | ギリシア法 / ローマ法 / 法廷弁論 / 民事訴訟 / キケロー / デモステネス / 特示命令 / パラグラフェー |
研究概要 |
平成23年度の研究実績の概要は以下の通りである。 第一に、古代ギリシア・ローマ法における民事訴訟の通説的理解(Lipsius, Kaser)に関して確認したのち、それに対する近時の批判(Metzger, Scafuro etc.)の要点をまとめ、 あきらかにすべき問題点を列挙した。 第二に、上記の問題点の中で最大のものは、いわゆる正式の「裁判手続」と代替的紛争解決(ADR)との区別が、理論上(方法上)および実際上(資料上)、古代ギリシア・ローマでは、どこまで可能なのか、という点である。従来の学説は、一方でガイウスの『法学提要』という「資料」をそのまま「正式」の裁判手続とみなし、他方で、キケローの「法廷弁論」という「資料」を「実際」とみなしてその乖離を論じてきた。ギリシアでいえば、アリストテレスの『アテナイ人の国制』が前者であり、デモステネスの「法廷弁論」が後者にあたる。 第三に、以上の問題点を踏まえて、23年度は、まず、キケローおよびデモステネスの(現存する)全法廷弁論集を、一覧表にして、分類および相互比較を行った。そして、この資料の限りで同定できる「正式の裁判制度」と呼べる部分を明らかにする作業を開始した。 第四に、キケローおよびデモステネスの弁論のうち、「正式の裁判制度」といえるかどうか不分明なものを選び出し、訳出した。キケローの『カエキーナ弁護論』およびデモステネスの弁論36-38番、43番などである。 最後に、他の法文化における資料、例えば、日本中世における「陳状・訴状」、フランス古法裁判資料(『Olim』)、などの紹介を行い、共同研究者全員で議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成22年5月開催の法制史学会において、葛西および吉原は本研究テーマにかかわる共同報告を行い、平成23年度には吉原がキケローの『カエキーナ弁護論』を翻訳公刊した。一方葛西は、平成23年4月に所属先を変更し、同年7月、ケンブリッジ大学で開催の「英国法制史学会」で研究報告したので、おおむね順調に研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、23年度の研究成果を踏まえて、共同研究者全員による全体研究会を2回開催する。ギリシア・ローマ法分野に加えて、日本中世およびコモン・ロー、さらにフランス近世の民事訴訟と法廷弁論の関係についての資料状況を報告を行う。また、葛西はデモステネス弁論集(36-38番)を翻訳出版の予定である。 平成25年度は、できれば海外研究者を招聘して、国際シンポジウムを開催したいと考えている。そして、最終年度である平成26年度に、研究成果を論文集という形で、英文(欧文)で発表する予定である。
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