研究課題/領域番号 |
23330003
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
葛西 康徳 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (80114437)
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研究分担者 |
松本 英実 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (50303102)
吉原 達也 日本大学, 法学部, 教授 (80127737)
西村 安博 同志社大学, 法学部, 教授 (90274414)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | ローマ法 / ギリシア法 / 紛争解決 / 民事訴訟 / 法廷弁論 / 訴訟構造 / 裁判外紛争処理 |
研究概要 |
本研究は、古代ギリシア・ローマの民事訴訟を、裁判手続、特に弁論手続に至るプロセスに焦点を合わせて、法 資料のみならず法廷弁論資料を分析することにより、実証的・総合的に明らかにすることを目的とする。伝統的 理解によれば、ギリシア・ローマ法は、その運用や実態はともかくとして、訴訟手続自体は厳格かつ確定したも のとされてきた。しかし、最近の研究では手続自体が必ずしも確定的ではなく、当事者および関係者の解釈や選 択の余地を残すものであることが指摘され始め、通説は大きく揺らいでいる。本研究は、「法学と弁論術(レト リック)」に関する長年の共同研究の基礎に立って、①手続法と実体法に関する基礎理論の方法的検討、②ギリ シア・ローマ民事訴訟通説の批判的検討、③法廷弁論資料さらに比較裁判資料の精密な分析、を通じて、ギリシ ア・ローマ民事訴訟を根本的に再検討するものである。 本年度の成果は以下のとおりである。 第一に、ギリシア裁判制度に関しては、ブラウン大学のアデレ・スカフーロ教授を招聘することによって、共同研究会を数回開催し、特に訴訟経済および裁判外紛争処理の点に関して共同研究を行った。 第二に、ローマ裁判制度に関しては、夏休み中にグラスゴー大学に赴き、ローマ法教授アーネスト・メツガーと意見交換を行った。特にローマの二段階訴訟、法務官および審判人の権限と責任について、集中的に検討した。 第三に、ギリシア、ローマの裁判制度比較に関しては、アテネにおいて開催された国際ギリシア法シンポジウムに参加し、オーストリア科学アカデミーのゲアハルト・テュール教授と意見交換を行った。 最後に、このような国際研究集会への参加から得られた成果と、共同研究者各自の分担領域における研究成果を突き合わせるために、国内研究会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、古代ギリシア・ローマの民事訴訟を、裁判手続、特に弁論手続に至るプロセスに焦点を合わせて、法 資料のみならず法廷弁論資料を分析することにより、実証的・総合的に明らかにすることを目的とする。この目的に照らして、現在までに、最先端の研究状況・問題状況を把握し、国内外の研究者とのネットワークを確立した。
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今後の研究の推進方策 |
課題A 手続法と実体法に関する理論的研究 まず、手続法と実体法という概念および両者の区別に関する理 論的考察として、オズボーンとハリスの論争を、具体的資料において検証する。最適の素材として「パラグラフェー(paragraphe)」を、ローマ法においては「特示命令(Interdictum)」を 取り上げる。 課題B 共同研究者の各専門分野における法制史個別研究 ここでは、まず、全体の個別研究を以下の三分野 に分けたうえで、各分野においてそれぞれ三つのテーマを設定し、個別研究を行う。 1 ギリシア法「パラグラフェー(paragraphe)」、「相続訴訟」、「二段階裁判再考」の各項目について検 討する。 2 ローマ法 「特示命令(Interdictum)」、「相続訴訟」、「二段階裁判再考」の項目ごとに検討する。 3 比較法制史(日本およびフランス) 研究分担者西村は、長年日本中世の「和与」手続を一次資料に基づき解明してきた。この手続きは、陳状、訴 状の応酬に始まり、それに終始する。イングランド法のwritに極めて興味深い類似性を有する。このいわば弁論 のない裁判前手続こそ本研究全体にとって重要な比較の視座を与えると考える。 研究分担者松本は、近世フランスの裁判管轄争いを一次資料により分析してきた。同一事件を異なる裁判所が 同時進行で裁判する現象が恒常的に見られ、その際に管轄・手続的論点と実体的論点は多くの場合同時に提出さ れ、複数手続が同時進行していく。ここでは手続自体が不確定でかつ実体法と交錯する。裁判所の多元性と裁判 前の過程および裁判手続きとの関係を問い、比較する。 課題C 日本学術振興会短期招聘で来日予定のグラスゴー大学メツガー教授(ローマ法)を囲んで、共同研究 会を開催する。
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