研究課題/領域番号 |
23330004
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
北野 かほる 駒澤大学, 法学部, 教授 (90153105)
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研究分担者 |
鶴島 博和 熊本大学, 教育学部, 教授 (20188642)
田口 正樹 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20206931)
西村 安博 同志社大学, 法学部, 教授 (90274414)
岩元 修一 宇部工業高等専門学校, 一般科, 教授 (00175217)
皆川 卓 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90456492)
佐藤 猛 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30512769)
図師 宣忠 近畿大学, 文芸学部, 講師 (60515352)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 紛争解決 / 裁判 / 仲裁 / 調停 / 和解譲渡 |
研究概要 |
代表者・分担者および招聘研究者それぞれが研究対象とする時代・地域について、紛争の形態およびその解決ないし解決の試みの実態が多様であることが明らかになり、ここから、前近代については、必ずしもメインの紛争解決類型とサブの紛争解決類型という分類を前提として紛争とその解決を捉えるべきではないことが明らかになってきた。 また、紛争それ自体について、その政治的性格と法的性格を截然と区分することは必ずしも容易ではないが、しかし、分析する際には、政治的問題の政治的解決と、解決に与えられる法的座標とを意識的に認別する姿勢が重要であることも明らかになってきた。この姿勢は、とりわけ、残存する紛争関連史料から何をどう読み取るかの際に、史料文言のみをただ受容的に再述するだけでは、事態の政治的側面-当時のひとびとの意識においてさえ単発的一回的であると認識された事態-と、法的側面-当時のひとびとの意識ないし半意識において反復性再現性がありうると認識された事態-を、容易には区別できないことが少なくないだけに、重要であると考えられる。 地域により時代により、また、紛争の類型により、残存史料の種類と幅が多岐にわたることが、改めて確認できた。同時代的意識においても法務文書であるものから、なんらかの権力を持つ機関にかかわる行政文書、さらには、年代記等の叙述史料まで、紛争にかかわる情報源は多岐にわたる。それだけになお、これら情報源のクロスレファレンスによって、個別の紛争の実態に迫るだけでなく、紛争およびその解決の法的性格を見極めるための視点を、自覚的に維持し、かつ、その視点の射程および有効性について、異なる時代および地域の紛争解決との類型的対比を重ねることの重要性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前近代の紛争解決における「裁判」と「裁判外」の関係を見極めることが、本研究課題のひとつの目的であったが、厳密な意味での裁判所伝来史料だけでなく、多様な史料から、前近代における紛争の実態と、そこにおける「裁判」の利用のありかたを探ることができた。 「裁判」について、個別の紛争解決における政治権力のかかわりのみならず、政治権力の紛争解決全般に対するスタンスを探ることにより、権力と裁判とのかかわり自体が多様であり得たこと、すなわち、政治権力は、一方では自らの名のもとに運営される裁判機構の信用を維持すべく、その効力に対する正面からの疑問は容認しないが、他方では、この信用が、かならずしも機構の杓子定規な運営によって得られるものではないことを十分に認識していたことが明らかになってきた。
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今後の研究の推進方策 |
多様な紛争類型・紛争解決類型を探るための個別の事例研究は相当進展したが、これまでに明らかになった紛争解決類型相互間の位置づけは、個別研究から自動的に導かれるものではない。このため、最終年度は、紛争解決類型の比較をより広い視野から捉えるべく、紛争とその解決の分析に資する史料群の考察にも力点を置き、法務史料群と行政・叙述の各史料群とのクロスレファレンスの際に留意すべき視点について、考察を深めることとしたい。 このことにより、紛争類型および紛争解決類型をめぐる同時代的な認識について、政治的側面と法的側面を識別する視点の設定とその活用を、史料群の属性(複数)と関連させる方法についての考察をある程度整理することができると考えている。
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