研究課題/領域番号 |
23330008
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
太田 匡彦 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80251437)
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研究分担者 |
斎藤 誠 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00186959)
磯部 哲 慶應義塾大学, 法務研究科, 准教授 (00337453)
飯島 淳子 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00372285)
笠木 映里 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30361455)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 公法 / 自治 / 社会保障法 / 地方自治 / 行政法 / 医療保険 / 機能自治 |
研究概要 |
平成23年度の研究結果を踏まえて、ドイツ及びフランスの医療保険に関する自治および地方自治に関する研究を行った。以下の諸点を概要として指摘できる。 ドイツに関しては、第1に、ドイツの公法学の議論を参照しながら、地方自治と機能自治とを自治の概念の下で統一的に議論することの是非に関する議論状況を分析した。理論的根拠・実定法上の手がかりが交錯する議論状況が明らかになった。第2に、2011年に行われた医療保険法改正法により一層問題が複雑化した医療供給体制の整備に関わるラント・ゲマインデ・共同連邦委員会などの諸権限の交錯状況を検討した。協働が慫慂されるところ、その前提となる明確な権限の割当てに欠けるところがあるという意識の存在も明らかになった。第3に、機能自治の民主政的正統化に関する研究を進めた。 フランスに関しては、第1に、機能自治として捉えられるところの、コミューンが構成する各種組織の機能を分析すると共に、コミューンの地方自治との関係を検討した。第2に、国が権限を持ち、そこに各種利害関係者が参加して利益を表出する形をとる病院配置に関する法制度とその運用を検討した。第3に、医師会の果たす機能が具体的にどのようなものであるかをさらに広く検討した。これらの検討については、文献調査のみならずインタビュー調査により得られた知見も大きく、また医師会の機能に関しては、国際的な組織との関連も意識するべきことが明らかとなった。 このほか、日本についても、各研究者それぞれの関心に従い、地方自治のあり方、社会保険の自治のあり方、さらには社会保障の構造等に関する検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地方自治と機能自治との比較可能性を図るための理論的基盤に関する研究は、おおむね予定通り進展している。他方で、フランス・ドイツの医療保険における自治を考えるための格好の具体的テーマとして、医療供給体制の整備に関わる国家・地方公共団体・医療保険主体・医療提供主体の各種権限とそれらの関係、交錯と協働関係の分析という問題群が浮かび上がってきた。日本における病院配置計画に関する諸問題との比較可能性も十分に有する問題群であり、一般的・総論的な分析と、個別領域に関する分析とを相互にフィードバックさせながら研究を進めると共に、ドイツ・フランスの相互比較も具体的なテーマおよび一般論それぞれのレベルで行うことが可能となったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究を踏まえて、一方で、自治の基礎理論という観点から地方自治と機能自治とを統一的に自治の観念の下で捉えることの適否に関する検討を続行する。また関連して、民主政的正統化との関係(自律的正統化の要請の位置づけ)といった、憲法上の要請・限界・根拠づけに関する研究も進める。 他方において、医療保険における自治と機能自治との比較を可能とする具体的問題の探索という作業は、医療供給体制整備に関わる国家・地方公共団体・医療保険主体・医療提供主体の各種権限とそれらの関係、交錯と協働関係の分析という問題群を浮かび上がらせた。これは、二つの自治の比較検討を進めるための具体的な問題として適していると思われるので、医療供給体制の整備という具体的切り口を大切にしながら、医療保険における各種アクターの自治・自律の位置づけと、相互の関係に関する分析を行う。 これらは、ドイツ・フランスの議論状況を比較しながら行うことになる。またこれまでと同様に、我々の問題関心の基礎にある日本法の状況についても研究を進める。これまでと同様に、定期的にメンバーによる研究会を行い、相互の知見を交換し合いながら、それぞれの関心を生かす形で研究成果をまとめるように努力したい。
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