研究概要 |
本研究の最終年にあたる本年度は、外国法研究の成果として、非正規雇用(とりわけ非正規雇用問題の中核を占める有期雇用)の規制の在り方について、欧州諸国で採用されている規制アプローチとアメリカで採用されている市場調整アプローチという対照的アプローチが存在することを明らかにし、さらに、欧州の規制アプローチの内容を、締結事由規制、濫用規制、不利益取扱い禁止規制の3つに整理した。そして、欧州では締結事由規制から濫用規制へと規制の比重の変化が見られることを指摘し、日本における立法政策としては締結事由規制ではなく濫用規制に焦点を置くべきことなどを明らかにした。こうした比較法的研究成果は、荒木『労働法(第2版)』、同「有期労働契約の締結事由・無期転換」、荒木・山川他『詳説労働契約法(第2版)』等に反映するとともに、Harvard Law School, Columbia Law School, Marquette Law School, Illinois University, Boston Collegeにおける研究会で報告し、専門家と議論を行った。 また、非正規雇用の相互関係を踏まえた総合的検討については、有期雇用法制とパート法制・派遣労働法制の関係や、三つの非正規雇用形態に共通して雇用形態差別として議論されている課題等についても検討し、その成果については荒木・前掲書等に反映させた。 さらに、2012年に労働契約法改正が成就し、労契法18条~20条が新設された。そこで本研究でも立法政策的検討に加えて、具体的な条文の解釈論に取り組むとともに、有期労働契約法理における基本的概念について検討を深めた。その成果は荒木「有期労働契約法理における基本概念考―更新・雇止め・雇用継続の合理的期待」、荒木・前掲書、荒木・山川他・前掲書で公表し、また、荒木編『有期雇用法制ベーシックス』で公表予定である。
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