研究課題/領域番号 |
23330020
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
土田 和博 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60163820)
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研究分担者 |
若林 亜理砂 駒澤大学, その他の研究科, 教授 (00298069)
長谷河 亜希子 弘前大学, 人文学部, 准教授 (00431429)
越知 保見 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (00554049)
岡田 外司博 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30213945)
林 秀弥 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30364037)
青柳 由香 東海大学, 法学部, 講師 (60548155)
清水 章雄 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70142784)
宮井 雅明 立命館大学, 法学部, 教授 (70273159)
東條 吉純 立教大学, 法学部, 教授 (70277739)
須網 隆夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80262418)
渡邉 昭成 国士舘大学, 法学部, 教授 (90329061)
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 独占禁止法 / 域外適用 / 国際的執行 / 競争法 / 管轄権 |
研究概要 |
○2013年1月に6名によるアメリカ聴取り調査を行った。ヒアリング先は司法省反トラスト局、American Antitrust Institute、法律事務所であった。質問事項は、Foreign Trade Antitrust Improvement Act(FTAIA)の「輸入留保」と「効果例外」の関係、エアカーゴ事件、自動車部品事件などであった。これらは、最近の新しい判決(Animal Sci. Prod., Inc. v. China Minmetals; Minn-Chem, Inc. v. Agrium, Inc.等)を踏まえて行われた。また2013年3月に3名によるEU聴取り調査を行った。対象は欧州委員会の競争総局とリーガルサービス部および複数の法律事務所であった。欧州委員会競争総局では欧州委員会の競争法の域外適用に関する基本的考え方、テレビ用・パソコン用ブラウン管事件決定、航空利用運送事件決定などについて、また欧州委員会のリーガルサービス部では、BrusselI条約の問題点と改正の必要性について聴取りを行った。ブリュッセルの法律事務所では液晶パネル事件、エアカーゴ事件等についてヒアリングを行った。 ○欧米への調査に先立って、合計4回の研究会を早稲田大学で行った。 ○2012年10月に、当初計画の予定どおり、土田和博編『独占禁止法の国際的執行-グローバル化時代の域外適用のあり方』(日本評論社)を刊行した。これは、本共同研究の多くのメンバーが執筆したグローバルCOE・中間報告書『独占禁止法の域外適用-グローバル化時代の独禁法適用のあり方』を基にして、それ以後の研究も踏まえてリライトした上、出版したものである。出版に当たって、学術振興会より学術成果公開促進費の交付を受けた(課題番号245137)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
○昨年度の主たる研究課題は国際カルテルと執行管轄権であり、東(南)アジア諸国に所在する事業者によるテレビ用ブラウン管国際価格カルテル事件が最も重要な研究対象の1つであったところ、これについては京都でのセミナー、インドネシア調査等によって様々な角度から検討することができた。京都セミナーは、韓国、中国から研究者を招聘して開催したものであり、参加者は予定したとおり、海外研究協力者の権五乗氏(ソウル大学)、申玄允氏(延世大学)、王暁曄(中国社会科学院)、徐士英(華東政法大学)であった。韓国とはテレビ用ブラウン管事件、中国とはパナソニック・三洋事件がある中でのセミナー開催となり、具体的事例を前提として踏みこんだ討論ができた。 ○2012年度は、上述のとおり、6名によるアメリカ聴取り調査(ヒアリング先は司法省反トラスト局、American Antitrust Institute、法律事務所)および3名によるEU聴き取り調査(欧州委員会の競争総局とリーガルサービス部および複数の法律事務所が対象)を行うとともに、土田編『独占禁止法の国際的執行ーグローバル化時代の域外適用のあり方』(2012年、日本評論社)を刊行した。 ○当初の計画では、アメリカ調査は2013年度に予定していたから、その点では1年前倒しで計画が実施されているともいえる。達成度としては当初計画以上に進展していると言ってよいと思われる。最終年度である2013年度においては、当初計画で予定していた独占禁止法の国際的執行をテーマとする国際シンポジウムを、海外研究協力者などを招聘して日本で開催することとしたい。また、当初計画以上に進展している欧米のヒアリング調査の結果、補充調査の必要性が明らかとなった液晶パネル事件等については、予算が許せば、今年度に調査対象としたい。
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今後の研究の推進方策 |
○当初の研究計画どおり、国際的な市場支配的地位濫用、不公正な取引方法、管轄権競合・抵触の解決方法を今年度の研究課題としたい。ただし、昨年度のアメリカやEU調査の結果、重要性を再認識した液晶パネル事件、現在、アメリカや司法省がなお事件処理を継続している自動車部品カルテル事件やパソコン用・テレビ用ブラウン管事件など国際カルテル事件にも相応のエネルギーを注ぎたい。不公正な取引方法については、相手国にこの規制がない場合、域外適用すべきか(消極礼譲を働かせるべきか)が1つの重要な課題であり、また実際上その適用可能性があるのは下請、フランチャイズ関係の中で下請法違反、優越的地位濫用を主張する国際民事訴訟においてではないかと考えられる。国際的執行のあり方や管轄権競合・抵触を調整する方法は、最終年度である本年度において重点的に検討する。 ○アジアや世界の中で、やや埋没しつつある感がなくはない日本にとって、国際的な発信は重要である。理論・実務のレベルの高さは決して世界に劣っていない日本が積極的に存在価値を示す機会はもっとあってよいと思われる。そのような手段の1つが国際シンポジウムであり、東アジア、欧米の研究者、実務家が参加するシンポジウムを今年度に開催することとしたい。テーマは、3年間の研究を取りまとめる意味で、独禁法の国際的執行全般、国際カルテル、国際企業結合、国際市場支配的地位濫用などに関するものとなる。 ○昨年度、EUとアメリカについて調査を行った。その過程で浮かび上がった事件(例えば液晶パネル国際カルテル事件)等について補充的に調査を行うため、台湾、アメリカ等への出張を計画する。2012年度、訪問できなかったイギリスについても可能であれば、2013年度に調査したい。
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