研究課題/領域番号 |
23330028
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
平野 裕之 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (80208842)
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研究分担者 |
吉田 克己 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20013021)
小柳 春一郎 獨協大学, 法学部, 教授 (00153685)
金山 直樹 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (90211169)
片山 直也 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (00202010)
森田 宏樹 東京大学, 法学政治学研究科, 教授 (70174430)
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キーワード | 物権法改正 / フランス物権法 / 無体財 / 集合財産 / 財産管理 / 都市問題 / 財の多様化 / 用益権 |
研究概要 |
本研究は,フランス民法典物権法改正準備草案を手掛かりとして現代社会に適合した新たな体系的物権法のあり方を提案する。平成23年度の研究計画の基軸として,仏人研究者の参加により,多様な財の帰属・支配の基礎理論に関する第2回日仏比較物権法セミナーを開催が予定されていた。当該計画は2011年9月21日,22日の北海道大学で開催されたシンポジウム「21世紀における物権法改正に向けて-日仏比較研究」として結実した。なお、同シンポジウムに先立ち、月一度の研究会を開催され、各テーマの検討が深められた。各テーマにつき仏人研究者と共同で、森田が「物権法と債権法」、吉井が「財の法に関する普通法と特別法」、片山が「財の管理」、平野が「物権法・担保物権法と私的自治」、金山が「有体物と無体物の占有」の報告対論が行われ、吉田による議論の総括が行われた。金山報告は日本法における無体物の規律の現状に明らかにし、平野報告は高度産業社会と財産の多様化に伴う私人による財の創出に対する法規制の現状を示す。また、片山報告が現代において重要性を有する物と人との関係の一つの財産管理を物権法の問題として論じる意義を明確にした。森田報告はこれら多様な財の法規制に理論的基盤を提供し、吉井報告は特別法に散在する多様な財の規制と一般法の関係性を明確にする。各テーマに対しては、小柳、山城、高が質疑応答を担当し、議論を深めた。吉田による総括は各報告を総合し、物権法の課題を統一的視座から描き出した。同セミナーでは日仏研究者間で活発な議論が交わされ、フランス法の物権法制の理解が一層深められ、同時に日本物権法の問題性が照射され、改正の方向性および今後の検討課題、必要な作業が明確化された。なお、同セミナーの報告論文は多数の媒体による発表が予定されている。これにより、同セミナーは現代的な物権法制のあり方の議論の進展に大いに寄与するものとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の計画である第2回日仏比較物権法セミナーは成功裡に終えられた。同セミナーの準備作業である研究会においては各テーマについて研究者間において検討結果および問題意識が共有され、検討が深められた。 また同セミナーにおいては日仏研究者の活発な議論により一層の深化が図られた。同セミナーの報告論文は新世代法政策学研究17号および法律時報において掲載される。また、同セミナーは仏人研究者より大きな関心が寄せられ、フランスにおける日仏共同の研究書発表のプロジェクトにつながった。これにより、より緊密な仏人研究者の協力のもと物権法改正についての研究体制が整えられた。以上のとおり、計画の基幹プロジェクトの成功および、その成果発表の広範性を理由として、区分(2)とした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の計画は前年度の第2回日仏比較物権法セミナーの成果発表および次々年度に登録された私法学会のシンポジウムの準備に充てられる。新世代法政策学研究17号による成果発表および、フランスにおける日仏共同による仏語による(第1,2回セミナーを基とした)研究書の刊行は、前年度のセミナーの反響および成果発表の重要性に鑑み今年度の研究計画に組み込むものである。また、次々年度の私法学会に向けての準備作業および物権法改正草案の策定のための検討を重ねる。それぞれの計画のために月1度の研究会を開催し、外部からも各分野に造詣の深い研究者を招聘し、議論を行う。
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