研究課題/領域番号 |
23330031
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森際 康友 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40107488)
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研究分担者 |
松本 恒雄 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (20127715)
須網 隆夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80262418)
長谷部 恭男 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (80126143)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 法曹倫理 / 公共性 / 弁護士不祥事 / 弁護士会の指導監督 / 依頼者保護基金 / 弁護士法31条 / 国際研究者交流 / ベルギー、米国 |
研究概要 |
本年度は、本科研費研究の第3年度に当たり、下記の通り実施。 4月中旬に、25年度研究計画の確認・遂行のため、研究打合せを行った。5月には打合せで決めた分担に基づき、各自が分担研究を開始。森際は6月上旬に、モンゴル国立大学で講演し、同国で進行中の司法制度改革の法曹倫理関係事項について助言。7月下旬には法哲学社会哲学国際学会連合世界大会(ブラジル)に参加、参加各国の研究者から情報収集し、ブラジル、そして帰途に米国の研究者と今後の国際共同研究に関して打合せ、Fordham大学のBruce Green教授に検察官倫理について講演頂けることとなった。8月には、ドイツ裁判官アカデミーで裁判官倫理について講演。10月には、分担者の松本恒雄が国民生活センター理事長に転出したので、須網隆夫早稲田大学法科大学院教授を研究分担者に迎えた。12月には、上記Green教授の講演会を名古屋で開催した。 他方、弁護士倫理の研究者にとっては、折から頻発していた、弁護士会等の要職経験者が弁護士の地位や経歴を利用して非行をはたらく、いわゆる弁護士不祥事への対策を講じることが急遽課題となった。日弁連の関係者と連携し、共同の対策研究会を7月から月次に開くこととなった。当研究のとりまとめとして、25年3月に、第5回法曹倫理シンポジウムを東京で開催。弁護士不祥事と自治組織の責任について、および、依頼者保護基金について、7回にわたる研究会の成果を報告した。前者については、欧州での状況と理論的到達点についてCCBE(欧州弁護士会連合会)の推薦を得てベルギーの弁護士会長経験者を、後者については、全米依頼者保護基金研究会長の推薦を得てハワイイ州の懲戒訴追局長および依頼者基金管理官の経験者を招聘し、その報告を受け、会場で議論した。会議後に、総括会を開催し、総括とともに、最終年度の研究に向けた研究テーマの調整を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本2013年度前半にすでに当初の計画をおおむね達成した。「法曹の職域拡大に伴う法曹倫理の展開」について、2011,12年度の研究で、欧米やアジアの動きを押さえた上で、わが国が何をなすべきかをおおむね明らかにし、その成果を各年度末の国際シンポジウムで披露し、内外の法曹倫理研究教育者と議論しているからである。さらに、本年度の前半、研究成果をシンポジウム来場者に配布した予稿・資料集の形で、広く全国の関係者にお送りした。研究成果はまた、一橋大学や名古屋大学等愛知法曹倫理研究会のメンバー校の法科大学院教育をはじめ、各地の教育現場に還元されている。また、職域拡大にとって重要な組織内弁護士協会とも連携し、さらなる研究協力を求められている。 他方、本年度には、弁護士不祥事が全国で噴出した。これへの日弁連としての組織的対応が問われ、弁護士の職業倫理の実効性確保における弁護士会の役割が改めて問われた。この方面の研究は、当初予定されていなかったが、当研究の延長線上にあるので、日弁連の関係者と協力しつつ、弁護士会としての対応に理論的基礎を与える活動を行うこととなった。関係者の努力を通じてこれに成功し、研究成果を2014年3月21-22日に東京大学で行われた国際シンポジウムで披露するとともに、成果を掲載した国際シンポジウム資料・予稿集が日弁連や単位弁護士会内の関係者の間で参照されている。これは研究計画との関係ではオーバーシュートであるが、これまでの研究があればこそ実現できた研究であり、成果である。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度が本研究の最終年度である。「法曹の職域拡大に伴う法曹倫理の展開」については2013年度前半にすでに当初の計画をおおむね達成した。したがって、2014年度は主として、前年度に取り上げることとなった、弁護士不祥事問題にかかる弁護士会の指導監督をめぐる検討事項を課題とする。 引き続き、日弁連の関係者と連携して、とくに新たに助成を得た日弁連法務研究財団の研究プロジェクトに加わった関係者と密接に連携して、月次で研究活動を進める。2013年度の研究が日弁連の行うべき対策について理論的基礎を与える、一種応急処置的な要素があったのに対して、本年度は、日弁連の行う対策について理論的指針を与えうる総合的反省的な方法で研究を進める。弁護士会の指導監督権限、とくに、弁護士法31条の解釈問題は引き続き研究の必要があるが、これら理論的に問題に加えて、実践的ニーズに応えるような研究をも行う。 その方法は、視座の多元化である。これまでの弁護士倫理が、依頼者ー弁護士の2元関係を主軸にしていたのに対して、この関係を律する弁護士職務基本規程を制定し執行している弁護士自治組織の役割にも注目し、依頼者ー弁護士ー弁護士会の3元関係で弁護士の職業倫理規範とその実効性確保の制度的措置を見直すこととする。具体的には、弁護士としての能力が減退した高齢・障害者に対して、勇退の道を設ける制度構想を行い、弁護士倫理規範の執行が弁護士の生きがいや生活手段を奪わずにすむような方途を講じるような研究である。理論研究に加えて、このような方向での研究を、弁護士の職業倫理問題を考察するのに必要な範囲で行う。
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