研究課題/領域番号 |
23330035
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
佐藤 恵太 中央大学, 法務研究科, 教授 (60205911)
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研究分担者 |
外川 英明 中央大学, 法学部, 教授 (80407866)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 意匠 |
研究概要 |
欧米では、Apple対Samsung訴訟が、同種事例の各国並行訴訟と米国での巨大賠償額で注目され、意匠法関連のシンポジウムが多数開催された。本研究の代表佐藤も、ディスプレイ画面デザインの意匠保護適格をカンファレンス報告(Oxford大学、高麗大学)し、ボルチモア大学Fryer教授を東京に招聘した公開討論・研究会を開催し一定の成果をあげた。また、審査後登録主義が本当に必要かという本研究当初の問題意識についても、シンガポール(ASLI;アジア法学協会)とシカゴ(ATRIP;知的財産教育者の国際学会)で学会報告した。 諸外国の意匠権侵害訴訟の調査では、意匠権侵害の公刊判決数が、予想外に少なく、残念ながら有意な比較を行うことができる状況でないとわかった。特許侵害訴訟が各国とも数十件/年程度なのに対し、意匠権侵害訴訟は、どの国でも1桁、それもあればよいほうという水準である。その理由は、国別の事情もあろうし(北欧は、基本的に訴訟嫌いと見られる)、意匠を巡る紛争が、関連企業の経験値の少なさから訴訟に踏み切る迄に成熟していないこと等であろう。ただ、無審査国でも侵害訴訟が少ないことは、審査後登録主義制度は侵害訴訟数を抑止する効果があると言えないことを表しており、更に検討するが、これが本年最大の調査成果でもある。加えて、一定領域のデザインのみ審査を行わないという立場(短ライフサイクルデザインについて韓国)も、TRIPs協定対応という観点の緊急避難的立法措置としてはともかく、恒常的な制度としてとるべきものではないという中間的結論も得られた。 以後の研究では、侵害訴訟実態の調査を継続しつつ、意匠法条約審議の方向性を念頭に、各国法の沿革を比較する予定である。また、条約の保護ネットワークが成立していない民族伝承模様や部族伝統工芸品の独自法(sui generis law)についても、引き続き調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
諸外国の意匠権侵害訴訟の裁判例が、予想外に数が少なく、比較しにくい状態であることが判明している。
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今後の研究の推進方策 |
裁判の現状だけでなく、立法沿革・経緯から、実体要件審査を行った後に権利を付与する仕組みの必然性があったかを分析することを計画している。
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