研究課題/領域番号 |
23330035
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
佐藤 恵太 中央大学, 法務研究科, 教授 (60205911)
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研究分担者 |
外川 英明 中央大学, 法学部, 教授 (80407866)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デザイン / 審査後登録主義 |
研究実績の概要 |
本年度は、ベネルクス法と、英連邦諸国のひとつであるシンガポール法について法比較作業を進めた。ベネルクスでは、予想に反してデザイン法の権利を基礎とする差止請求等の裁判事案が少なく、フランス法系諸国同様、著作権法を活用しているようであることが判明した。また、シンガポールの立法状況については、出願公開制度の採否について、最近の立法作業で議論されたが、登録後審査主義移行の必要性は議論されていなかったことがわかり、1970年代の意匠法立法時点の議論を調査する必要と確認された。加えて、審査を実施する(日本が審査官教育等を行っている)ベトナムの審査官にインタビューを行い、実情は新規性審査のみに限りなく近い実情であると判明し、登録後審査主義を規定上採用する国でも、実情を更に掘り下げると創作非容易のような評価にわたる要件の扱いに国による温度差が見られる可能性が明らかとなった。以後は、審査後登録主義の国についても、審査内容について少し掘り下げて調査することとし、方針を見直すこととしたい。加えて、審査を行わないで権利を付与する著作権法の訴訟における問題点を調査しており、法改正に関する議論が始まっている米国の調査を行い、登録と審査を義務づけるべきという強い主張があることを確認できた(研究会で報告)。また、審査後登録主義を採用しない他の制度(ドメイン名)で混乱が生じている点を明らかにした。 なお、年度中に、本研究のひとつのターゲットであった意匠登録にかかるハーグ協定に日本もアメリカ合衆国とともに加盟することとなり、条約加盟を機会に審査後登録主義を廃棄する方向を議論を行うことができないと判明した。ヘーグ協定を契機とするという手段を諦め、審査後登録主義を維持すべきかという問題意識そのものに立ち返り、更に次の意匠ハーモナイズ条約の外交会議後の国内議論、又はハーグ協定の利用状況を見て、提言を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
法比較等の作業は順調であるが、ハーグ協定加盟手続の進捗が予想外に早く進み、条約加盟と国内法改正が(審査後登録主義を維持したまま)実現してしまったので、条約加盟を契機とした議論を盛り上げていくことができなくなった。そのため、中間報告書にとりあげるべき内容を変更する必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
条約との関係をいったん捨象し、そもそも国内法の審査後登録主義を維持すべきかという基本的問題に立ち返り、改めて法比較調査を推進する。
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