研究課題/領域番号 |
23330041
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
久保 文明 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00126046)
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研究分担者 |
松岡 泰 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (40190425)
山岸 敬和 南山大学, 外国語学部, 准教授 (00454405)
宮田 智之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (00596843)
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キーワード | 共和党 / 民主党 / 保守 / リベラル / イデオロギー / 分極化 / 政党 / 超党派主義 |
研究概要 |
(1)2010年11月の中間選挙で台頭したティーパーティ運動を中心に、基礎的情報の収集と分析を行った。 とくに重視した研究対象は、イデオロギー的分極化、および超党派主義双方との関係に留意しつつ、2010年に行われた共和党内の予備選挙、同年の中間選挙、翌年の連邦政府債務限度額引き上げ交渉、シンプソン=ボウルズ委員会の活動、議会超党派特別委員会などである.ただし、2010年以前の事例も適宜分析対象とした。 (2)久保は共和党党員集会・予備選挙の期間にアイオワ州とニューハンプシャー州に、保守派の大集会である保守派政治行動会議(CPAC)の時期にワシントンDCに、松岡は少数民族の政治動向調査でニューヨークに、また宮田はシンクタンクの動向調査でワシントンに出張することができた。ここで収集した情報や知見は来年度に生かしたい。 (3)久保はティーパーティの全体的特徴について解説的論文を執筆し、またいわゆるパブリック・インテレクチュアルズの役割やそのアメリカ的特徴について、著書を刊行した。そこでは、政治的分極化とともにこれらの知識人集団においても分極化が起きている様相が歴史的な文脈において解明された。合わせて、こんにちのアメリカ政治において、このような知識人が果たしている役割の重要性も指摘されている。これまで研究が蓄積されていない分野であるが、その重要性は無視しがたい。 (4)久保はまたオバマ政権が成立を目指した環境エネルギー法案の審議過程を詳細に追い、共和党保守のみでなく、民主党保守派および同党農村州選出議員にもその法案への反対が広がっていたことを解明した。他方で、ティーパーティ系有権者・活動家にとって、排出権取引制度導入阻止など、地球温暖化問題に反対する態度は、一般に想像される以上に広範かつ根強い。アメリカにおいて、環境保護問題までがイデオロギー的対立の一部となっている様相が、この事例の分析から鮮明に明らかになったといえるであろう
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)2012年1月に早々と共和党保守派の運動であるティーパーティを対象にして、久保文明他編著『ティーパーティ運動の研究…アメリカ保守主義の変容』(NTT出版)を刊行することに成功した。メディアあるいは外交専門誌などの書評でも取り上げられ、好意的なコメントを得ている。学界を越えた貢献も期待できる。 (2)久保は共和党党員集会・予備選挙の期間にアイオワ州とニューハンプシャー州に、保守派の大集会の時期にワシントンDCに、松岡は少数民族の政治動向調査でニューヨークに、また宮田はシンクタンクの動向調査でワシントンに出張することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)多数の事例についての情報の収集と分析を継続して行う。 (2)本年の大統領選挙も分析対象に加えたい。共和党内での指名争いでは、サントラムに代表される宗教保守派、ポールに代表されるリバタリアン派、そしてロムニーを支持した経済的なエリート層など、党内でのイデオロギー的対立がかなり鮮明に現れた。 (3)オバマ政権の政権運営および選挙戦略についても、それが中道ないし超党派路線を模索するか、それともイデオロギー的な分裂に依拠したものになるか、注視する。後者であれば2008年と対照的な選挙戦となる。シンクタンクや外交政策コミュニティ、あるいは少数民族集団の指導者に間でどの程度超党派主義の模索が行われるかについて、初年度以上に力を注いで分析したい。
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