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2012 年度 実績報告書

米国政党再編成とイデオロギー的分極化及び超党派主義ー予備選挙に着目して

研究課題

研究課題/領域番号 23330041
研究機関東京大学

研究代表者

久保 文明  東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (00126046)

研究分担者 山岸 敬和  南山大学, 外国語学部, 准教授 (00454405)
宮田 智之(近藤智之)  東京大学, 総合文化研究科, 助教 (00596843)
松岡 泰  熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (40190425)
研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2016-03-31
キーワードアメリカ / オバマ / イデオロギー / 分極化 / リベラル / 保守 / 民主党 / 共和党
研究概要

本年度は2012年選挙をアメリカ政治の分極化のケーススタディとして分析しながら、オバマ政権第1期の実績についての総括と評価、黒人大統領のもとでのマイノリティ集団の動向と関係する政策の動き、そして外交政策におけるイデオロギー的分極化の発現状況について立ち入って分析した。成果としては選挙の過程に関するいくつかの論文の他、『オバマ・アメリカ・世界』及びマイノリティの動向に関する研究書、そしてアメリカの同盟政策とアジア回帰に関する論文集がある。
共和党大統領候補指名のための予備選挙においては党内での路線対立が一定程度噴出したものの、圧倒的に保守が優勢であり、相当保守的なロムニーが「穏健派」と形容されることも珍しくなかった。ロムニーはここで勝ち抜くために保守への傾斜を深め、その結果本選挙での軌道修正において困難を抱えることになった。移民、外交、税制など、多くの争点において依然として分極化が激しいことが窺えた。歳出削減のための超党派委員会もまったくといって機能せず、その結果ありえないと当初想定されていた歳出の急激な強制的一律削減が2013年3月から実施されることになったのはその象徴である。
移民政策は超党派的立法の動きがみられる政策領域であり、これについては本年度も十分注意を払ってきたが、さらに注視していきたい。銃販売に関する規制強化に関して一時超党派的試みが上院でなされたが、これは失敗に帰した。
外交においては、リビアのベンガジにおいてアメリカの大使らが殺害された事件をめぐって、保守派から激しいオバマ政権批判が展開された。ロムニーもオバマ外交を「謝罪・弁明・弁解・言い訳・弱腰」に終始したと決めつけた。外交政策も分極化の例外でないことが示されている。その中で例外的なのが日本他一部の同盟国に対する態度である。今後自由貿易政策においてもこの傾向が維持されるかどうかについて、見ていきたい。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1.2012年大統領選挙を事例として扱いながら、多数の論考を発表した。ここでは大統領選挙における予備選挙の意義、共和党予備選挙における保守派の優位とそのメカニズムなどについても言及している。
2.オバマ政権1期目について総合的に分析した成果(『オバマ・アメリカ・世界』)を刊行することができた。
3.外交政策についても『アジア回帰するアメリカ』を刊行し、オバマ政権がもっとも優先的と定義している対アジア外交をめぐる諸論点について解明することができた。
4.アメリカ外交の柱である同盟政策につき、アメリカ国内の動向、あるいは人権・人種問題に対する感受性の変化なども考慮に入れながら、『アメリカにとって同盟とはなにか』を刊行した。イデオロギー的分極化の中、対日政策、あるいは対NATO政策が一定程度その洗礼を受けずに済んでいる政治的論理と構造が、部分的にせよ示唆されている。
5.他方で、議会後任候補者決定の予備選挙に関する分析がやや遅れているため、今後こちらを補う必要がある。

今後の研究の推進方策

1.超党派的合意の試みついて、さらに分析を強化する。今後は移民政策、あるいは通商政策などが重要であろう。ただし、ブッシュ減税について、一部の共和党議員が妥協に応じたことに見られるように、税制などでもこれまでと異なった傾向を見出すこともできる。オンライン・ショッピングでの課税問題でも同様である。これらの問題も、事例として扱っていきたい。同性結婚問題における共和党保守派の態度も注目に値する。
2.イデオロギー的分極化を維持・強化する機能を果たしているティーパーティの支持基盤の動向、経済成長クラブ(Club for Growth)の活動などについて、さらに情報を収集し、理論化していきたい。宗教保守の動向も同様である。
3.保守派・リベラル派それぞれに知的な武器を提供しているパブリック・インテレクチュアルの役割について、今後はさらに注目していきたい。シンクタンク、メディア、論壇などでの知的なレベルでの戦いも、アメリカ政治の分極化と深い関わりを持っていると想像されるからである。

  • 研究成果

    (12件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 5件) 図書 (4件)

  • [雑誌論文] オバマ再選の勝因と2期目の展望2013

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 雑誌名

      外交

      巻: 17 ページ: 100-105

  • [雑誌論文] 二期目のオバマ政権2013

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 雑誌名

      読売クウォータリー

      巻: 24 ページ: 58-67

  • [雑誌論文] 米大統領選挙の結果から見る米国政治の現状-オバマ政権2期目を展望しながら2013

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 雑誌名

      学士會会報

      巻: 899 ページ: 4-14

  • [学会発表] 講和独立60周年記念シンポジウム「世界のリーダーシップ交代と新たな戦略環境を考える—アジア太平洋の安全保障構図」基調講演「米国からの視点を中心に」

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 学会等名
      日本防衛学会
    • 発表場所
      防衛大学校、横須賀市
    • 招待講演
  • [学会発表] オバマ政権の評価と2012年大統領選挙

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 学会等名
      日本記者クラブ
    • 発表場所
      日本プレスセンタービル、東京都
    • 招待講演
  • [学会発表] 米大統領選挙の結果から見るアメリカ政治の現状

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 学会等名
      学士會午餐会
    • 発表場所
      学士会館、東京都
    • 招待講演
  • [学会発表] アメリカ衰退論とアメリカ研究の将来

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 学会等名
      同志社大学アメリカ研究夏季セミナー
    • 発表場所
      同志社大学、京都市
    • 招待講演
  • [学会発表] 米国大統領選挙後の日米関係

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 学会等名
      日米協会
    • 発表場所
      国際文化会館、東京都
    • 招待講演
  • [図書] アメリカにとっての同盟とはなにか2013

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 総ページ数
      370
    • 出版者
      中央公論新社
  • [図書] アジア回帰するアメリカ-外交安全保障政策の検証2013

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 総ページ数
      230
    • 出版者
      NTT出版
  • [図書] オバマ・アメリカ・世界2012

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 総ページ数
      288
    • 出版者
      NTT出版
  • [図書] マイノリティが変えるアメリカ政治-多民族社会の現状と将来2012

    • 著者名/発表者名
      久保文明
    • 総ページ数
      206
    • 出版者
      NTT出版

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公開日: 2014-07-24  

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