研究課題/領域番号 |
23330044
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
飯田 文雄 神戸大学, 法学研究科, 教授 (70184356)
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研究分担者 |
辻 康夫 北海道大学, 大学院・公共政策学連携研究部, 教授 (20197685)
渋谷 謙次郎 神戸大学, 法学研究科, 教授 (50346277)
月村 太郎 同志社大学, 政策学部, 教授 (70163780)
網谷 龍介 津田塾大学, 学芸学部, 教授 (40251433)
西山 隆行 甲南大学, 法学部, 教授 (30388756)
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キーワード | 多文化主義 / 言語権 / 社会権 / 参政権 / 福祉国家 |
研究概要 |
本研究は、多文化共生社会論に関して2000年代半ば以降生じた変化を、言語権・社会権・参政権という3つの権利に則しつつ解明することを目指すものである。本年度は、少数派文化の集合的アイデンティティー形成自体に不可欠な言語権の問題に関連した、以下の研究を行った。(1)本研究ではまず、2000年代半ば以降の言語権論の理論的な側面での変容に関して、多様な先行諸研究を幅広く収集し、その特色や問題点を批判的に検討した。その結果、(1)文化的少数派の言語権に関しては、ある特定の個人に対して少数派言語の使用を可能にする個人権の議論と、当該少数派言語の教育や普及に関係する社会的諸制度の構築に関係する集合的権利の議論との区別が重要であること、(2)従来の言語権に関する先行研究では、言語学の領域では主として個人権的側面に焦点が当てられていたのに対して、政治学の領域では集合的権利の側面に焦点が当てられるという傾向が存在し、両者の架橋が不可欠である、等の重要な知見が得られた。(2)更に本研究では、2000年代半ば以降の北米・西欧・東欧諸国において、文化的少数派の言語権に関していかなる具体的変容が生じたかを多面的に分析した。その結果、(1)この時期の各国では、新たな移民の増加等に対応して、従来よりもより幅広い文化的少数派に対して固有言語の使用権を認めようとする、新しい傾向が生じた、(2)更にこの時期の各国においては、公的な標識等の多言語化等、従来から各国で比較的広範に認められていた言語権に加えて、少数派言語と多数派言語の二言語教育の推進等、言語権の権利内容面でも大きな変化が生じた、等の重要な知見が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本語での研究論文・図書の公刊や学会報告が当初の予定通り相当数行われており、更に外国語での研究報告も当初の予定通り順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、当初の計画に従い、文化的少数派の社会権に関する研究、更には、文化的少数派の参政権、日本社会の多文化化に関する諸問題を順次考察する予定である。そのために、国内外での調査を続行すると同時に、海外共同研究者を日本に招聘し、内外学会での研究報告や国内外学術雑誌への投稿、更には、研究の最終的な成果である共同論文集の刊行に向けた原稿作成作業を順次進める予定である。
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