研究課題/領域番号 |
23330051
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池内 恵 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40390702)
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研究分担者 |
鈴木 均 東京大学, アジア経済研究所地域研究センター, 主任研究員 (80414077)
小宮 京 桃山学院大学, 法学部, 講師 (80451764)
御厨 貴 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (00092338)
宮城 大蔵 上智大学, 外国語学部, 准教授 (50350294)
鈴木 一人 北海道大学, 教授 (60334025)
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キーワード | 外交史 / 国際関係史 / 資源外交 |
研究概要 |
本プロジェクトの初期・発足段階での知見の共有のために、2011年6月18日に日本比較政治学会の年次大会にて分科会「資源外交の比較政治」を実施した。池内恵(東京大学)による全体の方向性の提起に続き、本プロジェクトの研究分担者である鈴木一人が欧州の「資源外交」は成立するのか?-地域統合と資源外交の戦略的矛盾」と題する報告を行い、他の研究分担者が会場から討論に参加した。 資源外交をめぐる日本側の諸当事者、特に対イラン関係に従事した日本側の商社・金融関係者・官庁関係者へのオーラル・ヒストリー聞き取りを進めた。また、イランに関して死蔵されていた音声資料を各研究機関・団体から収集し、活字化して今後の研究の推進に資するよう図った。資源外交をめぐる官庁文書を経済産業省(通産省)関連団体で調査し、主要な当事者の私文書の所在も確認した。また資源外交を日本側で担った民間企業の私的文書の収集を進めた。 これに対して資源輸出国の側の対日政策に関する資料・証言記録も収集した。イランでは元イラン石油化学公社(NPC)総裁のモストフィー氏のオーラル・ヒストリー記録がペルシア語で存在することを突き止め、対日政策、特にイラン・ジャパン石油化学に関する部分を日本語訳した。 上記の作業によって、日本の資源外交をめぐって、官と民の双方の証言記録や史料の確定や所在の確認を行ったことは、日本近代史を資源外交の側面から見直す作業の基礎部分をなすものであり、今後の歴史学研究の発展に大きく資するものと考える。また、日本の資源外交政策を日本側の視点・資料だけからではなく、中東諸国、とくにイラン側の対日資源政策の意思決定過程・意図をめぐる現地語資料の発掘によって裏づける一歩を示したことは、前例のない貴重なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究体制の構築は順調に進み、6月の段階ですでに本プロジェクトのメンバーを主体にした学会パネル「資源外交の比較政治」が日本比較政治学会年次大会の分科会として招請され、研究体制の早期の設立に資した。当初の予定通り、対中東資源外交にかかわる事業の従事者へのオーラル・ヒストリーの手法による調査を体系的に進めており、関係者の私文書についても本プロジェクトの調査の結果、従来存在が認められていなかった文書を多く発掘した。また対イラン資源外交関係者に関する休眠資料の発掘が飛躍的に進み、音声資料の活字化が体系的になされた。また、イラン側では、イラン外交史料館から日・イラン資源外交関係についての史料開示を巡る協力関係が端緒についた。またイラン石油化学公社(NPC)元総裁モストフィー氏のペルシア語のオーラル・ヒストリー記録を発掘し、日本語訳を作成した。これらにより、このプロジェクトを発足させなければありえなかった予想外の進展がもたらされた。
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今後の研究の推進方策 |
二年度目は当初の計画通りに研究を遂行するつもりだが、特に、オーラル・ヒストリーや未公開文書の踏査結果を早期に簡易な製本等で、研究者間に流通可能な冊子の体裁で印刷し、資源外交をめぐる研究の活性化を図りたい。
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