研究課題/領域番号 |
23330060
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北川 章臣 東北大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (60262127)
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研究分担者 |
柴田 章久 京都大学, 経済研究所, 教授 (00216003)
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
太田 聰一 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60262838)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 関係指向性 / 市場指向性 / 長期取引関係 / 経済成長 / 構造変化 |
研究概要 |
平成25年度の研究実績は次の通り。理論面では、将来の不確実性が労働者の賃金勾配の傾きや労働市場のパフォーマンスにどのような影響を与えるかを簡単な一般均衡モデルを用いて分析した。将来の不確実性は企業の倒産確率を引き上げることを通じて賃金勾配を平坦化させるが、平坦化した賃金勾配では十分な労働意欲が引き出せないため、企業は従業員に需給均等水準を超えた賃金を支払うことでこれを補おうとする。その結果、十分な能力と就業意欲を持ちながら失業せざるをえない労働者が発生することを示した。また、企業内の意思決定が複数の主体によってなされる状況を取り上げ、ある主体が投資能力を誤って評価して行動した場合にかえって経済効率性が改善される場合があることを理論的に示した。実証面では、前年度からのパネル調査データを用いた転職と賃金変化に関する実証分析を継続した。また、事業所レベルのミクロデータを用いて、雇用調整の費用が正規雇用者と非正規雇用者の間でどのように異なるか、その相違がどのように変遷してきたかを構造的に推定する方法を検討し、推定作業を開始した。さらに、世帯レベルのミクロデータによって、世帯員の正規雇用、非正規雇用、その他就業、失業、非労働力の5つの状態間の移動を月次で推定し、非正規雇用状態への移行と他の状態への移行と景気循環との関係を調べる作業を開始した。また、県別の集計データを用いて、経済的リスクの変化が出生率に与える効果を分析し、近年の失業の増加は集計レベルでは出生率にはほとんど影響を及ぼしていないという結果を得た。この結果は、慶應パネルデータ(KHPS)を用いて同様の実証を行った柴田・レイモ(2013)の結果とは異なっており、現在この乖離の原因を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論面では関係指向性に起因する企業内や労働市場の諸現象(新卒一括採用や終身雇用の最近の変化)を説明する理論モデルがいくつか構築されたこと、実証面では事業所や世帯に関するミクロデータを活用し、労働移動や雇用調整の観点から、非正規雇用形態の拡大と「日本的雇用慣行」の変化に関して新たな発見が得られつつあるので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
理論面では、平成25年までに構築したモデルをより一般的な状況に拡張することを目指す。実証面では、正規雇用・非正規雇用の相違に着目した雇用調整形態の比較と構造変化の分析、正規雇用・非正規雇用間の移動頻度、それらの就業状態と失業状態・非労働力状態間の移動頻度に関する分析を引き続き進めて完成させ、非正規雇用の拡大の視点から日本の労働市場における関係志向性の変遷を特徴付ける。
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