2014年度には、不良債権が銀行部門に蓄積すると非効率が発生するモデルを作成したが、今年度は、そのモデルを抜本的に改訂し、不良債権の蓄積によって経済成長が低下するモデルを作成した。また、Diamond-Rajan型の銀行モデルを発展させて、二種類の別のモデルを作成した。 ひとつは、Diamond and Rajan型の銀行を一層シンプルにして、新古典派成長モデルに導入したものであり、このモデルによって、金融危機時の政策介入のコストとベネフィットを比較考量することができるようになった。もうひとつは、過剰債務を背負った企業と銀行の間のダイナミクスをモデル化したものであり、こちらは銀行取付のような急性の危機ではなく、慢性的な不良債権問題を分析するモデルとして有用な性質を有している。 これらの二つのモデルの改訂を進め、2015年度に作成したモデルを含めて、三つのモデルを論文化する作業を進めている。これらの理論モデルについては、慶応大学や民間機関主催の国際コンファレンスで発表し、米国やカナダの経済学者から有益なコメントを得た。2014年度の活動から得られたコメントなどをもとに、年度後半から年度末にかけて、理論をさらに発展させ、2015年度の研究につながっている。
|