研究課題/領域番号 |
23330063
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 和雄 神戸大学, 社会科学系教育研究府, 特命教授 (60145654)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 非線形 / 多数主体 / 人的資本 / 複雑系 / 貿易 / 神経経済学 |
研究概要 |
本研究は、異なる多数の主体からなる経済における意思決定から動学的均衡の分析を行う。 これまでのマクロ経済学の動学理論では、代表的個人の効用を最大化する分析が主であった。本研究では、異なる国が貿易を行う国際経済などのモデルを例とする多数経済主体からなる経済における動学的資源配分の、非線形動学分析を行う。更に、人的資本の役割を明らかにすることで、教育と生産性の関係も分析する。 本研究は、多数の主体の相互依存をモデル化することで、経済を複雑系として捉えて既存の経済学の統合を図る。 本研究では、特に以下の三つの観点から問題に取り組む。第一は「多数主体からなる経済の成長と安定化」、第二は「経済成長における人的資本の役割」、第三は「認知と行動の分析」である。 第一点に関しては、経済成長メカニズムに関する基礎的な分析を行い、多数の国の間に市場や外部性を通じた相互依存関係がある場合について、貿易を通じた国際連関を分析することである。二国間の国際貿易モデルと大域的な動学については、岩佐和道との共同研究を論文にまとめ、英文学術誌に発表した。第二点については、人的資本が経済成長において果たす役割を分析する。特に、教育の果たす役割について分析し、望ましい教育制度のあり方について議論する。人的資本の生産性への貢献については、八木匡、浦坂純子、平田純一との共同研究を発表し、論文にまとめ、邦文及び英文で学術誌に発表した。第三点については、経済主体の認知が、意思決定や行動にどのような影響を与えるかについて、脳活動計測を含めた神経経済学的な分析を行う。神経経済学については、産業技術総合研究所の脳磁気計MEGを用い、京都大学医学部のfMRI,MEGの機器を使用し、岩木直、福山秀直らとの共同研究を行ってきた。データの解析が進み、個人の異質性を捉えられる段階にまで来たので、国際学会で発表の予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
二国間の国際貿易モデルと大域的な動学については、岩佐和道との共同研究を、英文学術誌に発表し、高次元の動学について新後閑禎と分析した。人的資本の生産性への貢献については、八木匡、浦坂純子、平田純一との共同研究で、幼児期の教育投資の生産性への影響について調べて発表した。また、これまでの研究を邦文および英文学術誌に発表した。神経経済学については、データの解析が進み、国際学会の報告準備を進め、一部は英文学術論文として発表した段階である。研究は予定通りに進展しているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
多数経済主体モデルの非線形動学分析は、続けて国際貿易市場を分析する。人的資本の生産性の共同研究は、幼児期から思春期の子供への教育投資の生産性について調べる。神経経済学については、さらにデータの解析をすすめ、英文論文にまとめて発表する。
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