研究実績の概要 |
当該研究計画では、多数経済主体モデルに上記の非線形動学的手法を応用して、動学均衡経路の大域的な振る舞いを明らかにしようとした。 これまでのマクロ経済学の動学理論では、代表的個人の効用を最大化する動学的モデルの分析が通常であり、たとえ多数主体が存在する動学モデルであっても、それぞれの経済主体は同じ効用関数をもつという仮定の下での分析が主であったが、本研究では、異なる国が貿易を行う国際経済などのモデルを例とする多数経済主体からなる経済における動学的資源配分の分析を行い、更に人的資本の役割を明らかにすることで、教育と生産性の関係も分析したことにより、経済を複雑系として捉え、多数の経済主体の相互依存をモデル化することで、経済のふるまいを説明するものであり経済を非線形システムとして捉えるという視点から既存の経済学の統合を図った。 「多数経済主体からなる経済の成長と安定化に対する影響」に関しては、マクロ経済モデルで、政府支出が成長と循環にもたらす影響についてInternational Journal of Economic Theoryに発表し、Macroeconomic Dynamics に掲載予定となった。二国間の国際貿易モデルと大域的な動学についてはEconomic Theoryに発表した。 第二点としては「人的資本の蓄積における教育の果たす役割」について分析し、モラルがあたえる人的資本の生産性への貢献について、八木匡、浦坂純子、平田純一との共同研究を発表し、論文にまとめ、邦文学会誌に発表した。 第三点に、経済主体の認知のあり方が、学習や意思決定にどのような影響を与えるかについて、個人の脳活動計測を含めた神経経済学的な分析として、京都大学医学部のfMRI, MEGの機器を使用し、意思決定に関する脳計測を行い、オーストラリアで行われた「意識の国際学会」のポスターセッションで発表した。
|