研究課題/領域番号 |
23330077
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
末廣 昭 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (60196681)
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キーワード | 雇用保障 / 社会リスク / 生活保障 / 所得格差 |
研究概要 |
本研究は、東アジアの人口動態、労働市場の変容、社会保障制度の整備状況を踏まえたうえで、同地域の雇用保障の実態を把握すると同時に、所得・医療・雇用・介護の4つからなる「生活保障」システム全体の今後を展望することを目的とする。 具体的には、国連、アジア開発銀行など国際機関の人口・経済動向に関するデータや、各国・地域の人口センサス、労働力調査、家計調査、高齢者調査などの結果をもとに、①労働力人口、②労働市場の特徴、③社会保障制度の現状、④経済危機や自然災害など経済社会リスクの状況の4つの分野について、日本を含む東アジア10カ国・地域の比較を試みる。 本研究は当初、平成23年4月からの研究事業開始を計画していたが、実際に採択通知が届いたのが12月14日であったため、資料・データ集作成作業の一部と海外での実地調査の一部を、平成24年度前半に繰り越すことになった。まず資料・データ集については、平成23年度にメンバーが各地で収集したデータのほか、日本貿易振興機構アジア経済研究所の図書館が所蔵する各種統計類や報告書をもとに、中国、台湾、韓国、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシアの7カ国・地域について、研究補助員の助力を得ながら、500以上の図表を作成した。 次に海外調査については、平成24年7月タイ(厚生省、社会保障庁、国家統計局、国家経済社会開発庁など)と、同年8月広州・南寧(経済特区、工業団地、技術開発区などの労働状況)の2カ国で実施した。また、6月にはインドネシアの社会保障法、シンガポールの高齢者対策について、8月にはベトナムの労働市場とタイの社会保障制度・雇用対策について、それぞれ報告会を開催し、現状把握に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の繰越し分の研究事業のうち、資料・データ集の作成と海外での実地調査については、予定通り実施することができた。一方、企業レベルでの福利厚生の正規・非正規労働者別の適用に関するアンケート調査については、企業や経営側の協力を得ることがきわめて困難であったため、これに替わる各国の企業・労働統計(タイ語、中国語、インドネシア語など)の収集に、方針を切り替えた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度後半は、平成23年度の繰越し分の研究事業とは別に、中国(8月とは別のメンバーによる北京での調査)、韓国、マレーシア、インドネシアでの調査を予定している。また、資料・データ集については、各国・地域の年齢構成別長期人口動態と今後の推計(1950年から2050年)の整理と比較、各国・地域の人口センサス、労働力調査、家計調査(経済社会調査)、高齢者調査の「調査項目の国際比較」を行う予定でいる。また、国・地域別に入力した労働市場に関係するデータの国際比較も試みる。そして、整理を終えた全データを、東京大学社会科学研究所のホームページにアップロードする(平成24年10月末に日本を除く東アジア9カ国・地域のデータ619点についてアップロード完了。全体で1000頁以上)。 定例研究会については、平成24年度後半に実施する海外での現地調査の成果を中心に報告会を開催すると同時に、メンバー以外の研究者(韓国、ベトナムなど)を招へいして、東アジアの労働市場の変容について、具体的な把握に努める予定である。また、以上の研究計画を推進するために、引き続き研究補助員を雇用する。
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