研究課題
平成26年度の研究計画は二つの柱よりなる。一つ目は企業の雇用調整行動の推定である。これについては為替レートの変動が雇用にどのような影響を与えるかを経済産業省「企業活動基本調査」を用いて推定した。識別に用いたのは企業ごとに異なる輸出入への依存度である。推定の結果、円安時には輸出企業の雇用が増加する一方で輸入企業の雇用は減少する。雇用調整の反応は為替レートの永続的な変化に対してより大きい。また製品市場で市場支配力を持たない企業の方が為替レートへの反応は大きい。この研究は経済産業研究所の研究プロジェクトの一環としても行われており、経済産業研究所ディスカッションペーパーとして刊行予定で、その後、国際経済学やマクロ経済学の学術誌に投稿予定である。二つ目は電力使用に関する研究である。これについては原子力発電の潜在的コストを推定するため、福島第一原子力発電所の事故によって宅地被害がどれだけ発生したかを推定した。国土交通省の公開する宅地取引価格と文部科学省が公開する放射能汚染に関する情報を丁・大字レベルの地理情報で連結し、宅地取引価格が放射能汚染によってどれだけ下がったかを土地価格のヘドニック式を推定することで分析した。ヘドニック式の係数と放射能汚染の総面積を統合して計算したところ、福島第一原子力発電所事故の宅地被害総額は約2兆円と計算された。特に千葉県など事故現場からは離れているもののもともとの地価が高い地域での被害額が大きく計算された。この研究は一橋大学経済学研究科ディスカッションペーパーとして公開されており、学術誌に投稿中である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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