研究課題/領域番号 |
23330081
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
春名 章二 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (30136775)
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研究分担者 |
張 星源 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (10304081)
神事 直人 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60345452)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 技術スピルオーバー / 地域貿易協定 / 外国直接投資 / 特許引用 / 技術ソーシング / 比較技術優位 |
研究概要 |
1.地域貿易協定(RTA)が国際的技術スピルオーバーに与える効果に関する研究 前年度の分析の大幅改善と共に、新たな視点を加えて分析を行った。分析の焦点は前年度同様米国特許庁の国別特許申請・引用データを用いて、RTA締結が特許引用によって測定される国際的技術スピルオーバーを促進する効果の有無にある。説明変数であるRTAのダミー変数が内生変数であることを考慮して、内生性の問題に対処できる操作変数法による推定を行い、RTAの技術スピルオーバー促進効果を確認した。近年のRTAは単なる関税削減・撤廃にとどまらず、WTOルールを超えた様々な条項を含む、より進んだ地域統合であるケースが多いことに着目した。RTA締結のRTA加盟国間の技術スピルオーバー促進メカニズムを考えると、貿易量の拡大を通じた間接的効果に加えて、技術と関係する条項が協定に盛り込まれているために技術スピルオーバーを促進しやすいという、より直接的な効果も考えられる。RTAの統合の度合いによる違いについて分析し、概ね予想された結果が得られた。この点は次年度も継続して分析する。 2.技術ソーシングと外国直接投資(FDI)の構造との関係に関する研究 FDIは水平型・垂直型・輸出拠点型等のタイプによって動機も大きく異なる。「技術ソーシング」と呼ばれる、ホスト国企業から現地子会社を通じた技術スピルオーバーもFDIの動機の1つである。FDIの構造との関係は未解明である。そこで、米国特許庁の国別産業別特許申請データと日本企業の対外FDIデータを用いて、FDIの構造と技術ソーシングとの関係の分析を行った。投資国とホスト国間の技術面での比較優位を測定する指標として、特許申請件数に基づく「相対的比較技術優位」指標を構築し、FDIの構造と技術ソーシングとの関係を推定したところ、水平型FDIについて技術ソーシングが動機の1つである可能性があることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の一部が査読付学術専門誌等に掲載されるなど、公表が進みつつある。また、査読付学術専門誌に投稿中または投稿準備中の論文も数本あり、研究期間終了までにさらに研究成果の公表が進む見込みである。 その一方で、前年度までの分析の大幅な改善を図ったり、あるいは前年度までに未着手だった課題に着手したりするなどの進展もみられ、全体としてはおおむね順調に研究が遂行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたる平成26年度においては、これまでの研究成果のとりまとめ及び公表(査読付学術専門誌への論文掲載)に注力するとともに、前年度までに十分な分析・考察を行うことができなかった課題について分析を行い、成果のとりまとめを行う。 具体的には、貿易データ、特許申請・引用データに加えて、経済産業省の「企業活動基本調査」「海外事業活動基本調査」等の日本企業の個票データを用いた分析を引き続き行っていく。課題としては、外国直接投資と比較技術優位や技術スピルオーバーとの関係、特に企業の海外市場への参入・退出行動に着目した分析や、研究開発における競争関係が貿易と技術スピルオーバーに与える影響に関する分析などを予定している。 研究成果は国内外の研究会や学会、国際コンファレンス等で積極的に報告を行っていく。
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