研究概要 |
本年度は,住宅価格指数だけでなく,商業不動産価格指数の推計をも推計できるデータベースの構築と論文の取りまとめを行うことができた。まず,住宅価格指数の関する研究は,その価格指数の応用としての持ち家の帰属家賃の推計研究へと発展させることのめどを立てることができた。その成果は,国内外の学会で報告を行った。持ち家の帰属家賃は,SNA統計において,どの国においてもおおよそ10分の1を占めているものの,その推計方法においては課題が多い。また,ストック統計においても同様であり,日本においては,国連が示す推計方法に依然として準拠することができず,当面,それができないことを表明してしまっている。そのもっとも大きな原因の一つが不動産などの資産とそこから発生する帰属家賃の推計である。本研究は,そのような政策にも貢献できる成果となってきているものと確信している。続いて,商業不動産価格指数に関しては,J-REIT関係のデータベースの構築を行った。このデータベースを用いて,既に研究が始まっており,欧州中央銀行において開催される国際会議での招待講演で成果を報告する予定である。さらに,住宅購入者の家計特性がわかるアンケート調査を継続しており,その成果を用いて,首都圏の住居移動の移動則実態を解明した。この成果は,審査付論文として都市計画学会にて報告を行った。また,ここで得られた成果は,住宅価格指数を推計していくうえで,大きな知見をもたらす。家計特性の相違によって市場が分断されていることが確認されたためである。そこで,同データを用いて家計特性を加味したヘドニック関数の推計方法を開発し,近年,関心が高まる環境配慮型住宅の経済価値への応用可能性を模索した。その成果は,審査が通り,2012年夏にスコットランドで開催される国際学会にて報告することが決まった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は,継続研究ということ,さらに,海外の研究協力者の貢献が大きかったこともあり,大幅に当初の予定を超えて研究が進展するとともに,複数の審査付論文を生産することができた。また,本年度の成果は,今後,国際会議,学会での報告,各学術誌への投稿と,さらに発展させていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
商業不動産価格関連のデータベースの拡張と住宅購入者の属性がわかるアンケート調査の継続を行うことでデータベースを拡張し,次の研究へと発展させていく。まず,J-REITデータベースは,オフィス,住宅,商業施設などの複数用途のモデルへと発展させる準備を進めている。そのためには,データベースの拡張が必要となっている。さらに,家計特性のわかる購入者アンケートを拡大していくことで,東日本大震災後においての立地行動の変化も併せて分析を行うことを予定している。現段階では,予定以上に研究が進んでいるために,研究計画を発展的に拡大しているが,当初に予定されていることはすべてクリアしており,全く問題はない。
|