研究概要 |
23年度は,以下の3つの研究テーマに取り組んだ. (1)都市的用途宅地と後背農地の市場均衡 宅間・安藤(1999)の都市圏モデルが宅地と農地のみを対象としているため,土地利用政策を分析できるように,宅地の複数用途及び専業・兼業農家を導入するための枠組みの検討を行った.また,数値計算及び枠組みの検討に活用するため都市の食料・労働力の供給基地としての後背地の基礎データを収集した. (2)商業地/都市的施設における外部性 商業地/都市的施設と住宅地の間で生じる外部性に関して以下のアプローチで検討した.一つは,住宅価格が商業施設等で代表される都市的施設が持つ利便性と近接しすぎることによる混雑等の外部費用の二つの影響を受けていると仮定し,実証理論モデルの構築及びプレ分析を行い,その成果は研究会で報告した.二つは,商業地と他宅地用途の間の土地利用外部性の外部費用の推計のためのデータベースの構築を行った. (3)工業地における外部性 工業地と住宅地の間で生じる外部性を二つのアプローチで検討した.一つは,最終年度に(1)の枠組みでピグー課税等の市場重視政策を検討するため,工業地と住宅地の土地利用市場均衡モデルを構築して,工業地からの土地利用外部性の外部費用のプレ推計を行った.その成果は学会で研究発表した.二つは,住宅地用途が家計の居住地選択の結果に影響を受けることから,家計の意思決定に影響を与える製造業の立地要因の検討を行い,杉野・宅間(2010)を参考に実証理論モデルを構築した.その成果は学会論文集で発表した.
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今後の研究の推進方策 |
社会経済統計データを活用した実証分析から,本課題の目的である土地利用外部性の推計は可能である.しかしながら,日本の土地利用法制度下のみの実証分析だけでは,日本固有の法制度に起因した市場への影響の可能性を否めない.そのため,土地利用関連法制度が市場にもたらす影響を社会経済統計データから把握するだけでなく,法制度が市場にもたらす影響を法制度の比較法学的な分析から検討を行う必要がある.そこで,平成24年度は,土地利用関連法制度に詳しい専門家を研究分担者に追加し,日米の土地利用関連法に関する比較法学を行う.
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