研究課題/領域番号 |
23330097
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鐘ヶ江 秀彦 立命館大学, 政策科学部, 教授 (90302976)
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研究分担者 |
谷口 仁士 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 教授 (20121361)
大槻 知史 高知大学, 教育研究部・総合学系, 准教授 (40399077)
石橋 健一 名古屋産業大学, 環境情報学部, 准教授 (00333039)
熊澤 輝一 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 助教 (90464239)
城月 雅大 高知大学, 教育研究部・総合学系, 助教 (60532265)
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キーワード | 頑強性 / 逆都市化 / コンパクトシティ / 社会環境 / 人工環境 / 都市政策シミュレーション / 被害推定 / 防災まちづくり |
研究概要 |
「自然環境-経済環境」次元による持続可能性を重視してきたこれまでのコンバクトシティ政策について、逆都市化の起こりつつある日本の都市部において、コンパクトシティ戦略導入がもたらす「人工環境」「社会環境」次元の脆弱性に対処するための政策アプローチを検討するために、その脆弱性の検討を行った。コンパクトな都市形態を持つ市部を主な対象としており、特に研究開始直前にリアス式海岸でコンパクトな小都市が点在している東北地方沿岸部に東日本大震災が発生したことから、対象地域として被災東北沿岸部も含めた。 まず「人工環境」次元にもたらす影響として、東北地方沿岸部における津波要因を含め直接被害額推定式を開発した。そのために、まず既往の津波地震の被害データおよび復興計画の分析を通じて、津波地震の特徴や影響要因の特定を行った。その後、1960年チリ津波の被害データを利用し、津波による直接被害額の推定式および津波高に連動する津波補正系数式を開発した。これらの地震被害推定や津波被害推定のさらなる精緻化によって、コンパクト化する都市の物的構造や配置の変更に伴う被害推定の変化などをシミュレーションすることが可能になる。 一方、「社会環境」次元については、逆都市化に伴う人口流動による新住民の増加予測のもと、これまでの防災まちづくりの初期段階に必要とされる住民参加型防災マップづくりの新住民への効果と限界を明らかにし、来たる人口流動に備えた防災まちづくり政策の必要性を指摘した。また上記の東北沿岸部小都市における復興計画策定段階におけるステークホルダー間で予想される問題について考察を加えた。これらは災害が発生する前だけでなく、災害後の復旧・復興段階へも視野を広げたコンパクトシティ戦略の「社会環境」次元での脆弱性を考慮したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、コンパクトシティ政策の「人工環境」および「社会環境」次元の脆弱性を明らかにするとともに、政策のシミュレーションを行うものであるが、2011年度は災害リスクを抱えた都市だけでなく、東日本大震災で被害を受けた事例を含めた脆弱性の検討をできた。これらの脆弱性を構成する要素は政策シミュレーションのモデルの定式化に必要な変数であり、シミュレーションへ向けた準備が当初の計画のとおりに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
東日本大震災によって、リアス式海岸という地理的にコンパクトにならざるを得ない沿岸部都市が被災したことから、これまで予定していた災害リスクのある都市だけでなく、被災地での調査研究も継続していく。ただし、被災地はまだ復興に相当時間がかかることが予想でき、あくまで被災地の状況を十分に配慮して現地調査などを実施していく予定である。このように今回の大震災の被災地、過去の被災地、そして今後、被災地になるリスクのある都市と対象を拡大することによって、都市のコンパクト化による脆弱性をより正確に明らかにすることができる。そしてその脆弱性を減少させるために必要な人工環境の再配置を同定するとともに、ISO化されつつあるBCP/BCMを新たに加え、社会環境の変容に応じた頑強性を評価するための政策シミュレーションを実施していく。
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