研究課題/領域番号 |
23330097
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
鐘ヶ江 秀彦 立命館大学, 政策科学部, 教授 (90302976)
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研究分担者 |
石橋 健一 名古屋産業大学, 環境情報ビジネス学部, 准教授 (00333039)
谷口 仁士 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 教授 (20121361)
大槻 知史 高知大学, 地域協働教育学部門, 准教授 (40399077)
城月 雅大 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 講師 (60532265)
熊澤 輝一 総合地球環境学研究所, 研究推進戦略センター, 助教 (90464239)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | コンパクトシティ / 逆都市化 / 人口減少 / 頑強性 / 脆弱性 / 経済被害予測 / 社会関係資本 |
研究概要 |
本研究は人工環境ならびに社会環境に着目し、逆都市化におけるコンパクトシティの自然災害への脆弱性を評価し、脆弱性を補完し頑強性を保つための方策を提示することを目的としている。 人工環境に関する研究では経済被害推定による脆弱性の把握と頑強性を保つための方策提示へ向け、1)直接被害額推定式の改良と検証、2)復興計画の問題点と改善点の明確化(観光都市を対象)、3)復興計画への適用の3点について研究を実施した。特に直接被害推定式を改良し再現率を向上させたことと産業連関表を用い直接被害と間接被害の推定を可能としたことで、大規模災害による被害予測を可能とするツール開発に進歩をもたらした。さらに開発したツールを用いることによって、岩手県の被災地域における復興計画や南海トラフ巨大地震を対象とした防災計画を策定している三重県南部沿岸地域を対象に経済的側面について分析を実施した。 社会環境に関する研究ではコンパクトシティ政策の導入による社会環境の脆弱性増大に対処するため、頑強性を保つための地域連携とコミュニティ防災方策の提示、ならびに地域内社会関係資本(以下、SC)形成を目指した研究を行った。まず人口減少下におけるコンパクトシティの特性を持ち、かつ南海トラフ大地震の災害リスクに直面する高知市を事例に、周辺後背地との連携によるコンパクトシティのリスク低減方策をデザインした。また住民活動が活発でなく災害脆弱性が高い京都市内の地域コミュニティを事例に、少数の参加住民でも地域コミュニティの避難計画を策定できるモデルを検証した。そして、コンパクトシティにおけるリスクコミュニケーションを通じた住民間SC形成の可能性を明らかにするため、愛知県長久手市にてSC形成状況に関するアンケート調査を行った。なお現在、分析結果を元に被験者を抽出中であり、来年度中にリスクコミュニケーションに関するゲーミング実験を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工環境に関する研究では、経済被害を直接被害と間接被害に分け、それぞれに被害額を予測することを可能とするモデルを構築した。また、開発済みモデルの精度を向上させるためにモデル改良も順調に進み、従前モデルを超える精度を確保した改良モデルの構築に成功している。同時に、現実の地域の防災計画や復興計画に応用し、これら計画について経済評価を可能とするなど、最終年度の研究完了へ向けて概ね順調に進んでいるといえる。 社会環境に関する研究では、コンパクトシティ政策の導入による社会環境の脆弱性増大に対処するため、それぞれの課題の事例として優位性を有する地域を対象に頑強性を保つための地域連携と地域内活動方策の提示を行うことができた。また地域内SC形成を目指した研究についても、SC形成状況に関するアンケート調査を行なっているなど、こちらについても最終年度の研究完了へ向けて概ね順調に進んでいるといえる。 また、これらの研究については、主に日本地域学会の年次大会において発表を行い、論文として投稿しているなど、研究業績についても順調に蓄積を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成25年度は、逆都市化におけるコンパクトシティの自然災害への脆弱性を評価し、脆弱性を補完し頑強性を保つための方策を提示するため、人工環境・社会環境について、以下のとおり研究を進めていく。 まず人工環境に関する研究では、これから次第に出揃う東日本大震災の集計データを活用し、直接被害予測モデルを改良していく。間接被害予測モデルについては、自然災害を対象としたモデルへと拡張を行う。さらに、東北の被災地における復興計画の推移と同時に南海トラフ巨大地震で甚大な津波被害が予測されている地域の現地調査を踏まえ、より詳細な復興政策シナリオを設定し、定量的評価を基に復興計画として提案していく予定である。 社会環境に関する研究では、頑強性を保つための地域連携とコミュニティ防災方策を提示したのに続いて、社会環境であるSC自体を形成するための方策を検討する。そのため、長久手市での定量調査データを基に同市における住民間のSC形成状況を明らかにするとともに、リスクコミュニケーションに関するゲーミング実験の対象とすべき標本集団を同定する。その上で、平成25年9月に、長久手市でリスクコミュニケーションに関するゲーミング実験を行い、1)リスクコミュニケーション下における住民間の相互作用を通じたSC醸成意向の形成プロセス、2)コミュニケーション特性がSC醸成意向に与える影響について分析を行う。上記の知見を通じて、人口減少期のコンパクトシティ下における、リスクコミュニケーションを活用したSC醸成の政策パッケージの検討を行う。 なお、これらの研究成果は日本地域学会2013年度大会などにおいて学会発表の上、査読論文として投稿を行うとともに、学術書としてまとめる予定である。
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