研究課題/領域番号 |
23330099
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
土井 教之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (60098431)
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研究分担者 |
新海 哲哉 関西学院大学, 経済学部, 教授 (40206313)
松村 敏弘 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (70263324)
張 星源 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (10304081)
小林 伸生 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00351726)
猪野 弘明 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (30546776)
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キーワード | 国際寡占 / イノベーション・R&D / 知的財産権 / 動態的競争 / 国際リスク / 世界集中度 / 経済厚生 / 競争政策 |
研究概要 |
本研究の目的は、国際市場を想定し、企業の革新活動と市場競争、さらにその結果もたらされる市場構造の相互作用を双方向的、動態的に捉え、理論的・実証的にそのメカニズムを解明することである。即ち、1)国際寡占市場で競争する企業の研究開発、知的財産管理を含む戦略的革新活動が競争を通じて市場構造および経済厚生に与える影響を明らかにし、2)逆に外国為替、地勢、環境、政治などのリスクとそれによる市場構造の変化が、企業の革新活動と市場競争に与える影響を解明し、革新と市場構造の動態的相互作用のメカニズムを解明することである。これらの考察は、今日の日本企業にとって重要かつ緊要な課題である。なぜなら、日本産業は、特に国内市場の縮小と経済のグローバル化に直面し、国際市場で革新によって活動し競争していかなければならないからである。 実施した研究として、理論班は、上記の分析を行うために、寡占市場モデルを考察し、市場構造や企業の戦略的革新活動に与える影響を、企業行動と社会的厚生の両面から分析した。実証班は、既存研究を展望し、そして調査や入手した資料をもとにデータセット(輸出シェア、世界集中度などを含む)を構築し、それから一部それを用いて産業と企業レベルの計量分析を行った。一部、事前に期待したデータが入手不可と判明したので、迅速に代替資料を入手して対応した。従来、重要な問題として認識されながら、国際的にも十分に取り組まれていない課題であるので、理論班の精緻な分析結果および実証班の展望論文や計量分析は、意義のある問題提起となり、またこうした分析を促進する役割を果たすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論研究班は、それぞれ今年度の課題に対応した論文をほぼ完成し、当グループで開催したセミナーや他のセミナーで報告し、そして改善を図ったうえで投稿の準備を始めている。また、実証研究班は、従来行われていない研究課題のために、展望論文を作成し、そしてこの分析に適する基礎データを各種統計データや産業界のアンケート・ヒアリングを通して収集・集計し、分析した。実証分析の結果の一部は内外の雑誌に投稿され、またディスカッション・ペーパーとして公表され、そしてさらに中間報告として各種セミナーで報告されている。
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今後の研究の推進方策 |
理論班は、外国為替等の各種リスクの変動による市場構造への影響を、これまで考察した寡占市場モデルに入れて拡張し、リスクが市場構造、そしてさらに企業の戦略的革新活動に与える影響を分析する。併せて、モデルを用いたシミュレーションを通してそれらの変化が社会的厚生にもたらす影響を考察する。この際、実証班の実証研究結果に照合しモデルを改良する。 実証班は、前年度の調査や入手した資料をもとに構築されたデータセットを用いてさらに産業と企業レベルの計量分析を行う。この分析では、市場構造の変化(特に国際寡占化)が企業の革新活動に与える影響と、企業の革新活動と海外事業展開との相互作用を観察する。加えて、企業の海外展開が及ぼす地域経済への影響、そしてR&Dや海外活動における企業金融の影響を分析する。 全員による報告会をメンバー外の研究者も招いて開催し、各班の得られた成果について議論するだけではなく、随時成果を論文としてまとめ、内外の研究会、学会等で発表し、そして内外の雑誌に投稿し、またディスカッション・ペーパーとして公表する。最終的に、各班の研究成果を総合化する作業を行い、これまでの結果に立脚した政策運用や制度設計に向けての政策提言を作成しこれらを論文にまとめる。最終年度の後半(予定)に、本研究成果を深めるために内外の研究者を招聘し、研究会を開催し、それまでの成果の学術的意味を問う。また、本研究の成果の出版物として公開する準備を行う。
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