研究課題/領域番号 |
23330099
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
土井 教之 関西学院大学, 経済学部, 教授 (60098431)
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研究分担者 |
小林 伸生 関西学院大学, 経済学部, 教授 (00351726)
張 星源 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (10304081)
猪野 弘明 関西学院大学, 経済学部, 准教授 (30546776)
新海 哲哉 関西学院大学, 経済学部, 教授 (40206313)
松村 敏弘 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (70263324)
加藤 雅俊 関西学院大学, 経済学部, 講師 (80507707)
播磨谷 浩三 立命館大学, 経営学部, 教授 (90347732)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際寡占 / イノベーション・R&D / 動態的競争 / 経済厚生 / 競争政策 / 知的財産権 / 国際リスク / 世界集中度 |
研究概要 |
本研究の目的は、国際市場を想定し、企業の革新活動と市場競争、さらにその結果もたらされる市場構造の相互作用を双方向的、動態的に捉え、理論的・実証的にそのメカニズムを解明することである。即ち、1) 国際寡占市場で競争する企業の研究開発、知的財産管理を含む戦略的革新活動が競争を通じて市場構造および経済厚生に与える影響を明らかにし、2) 逆に外国為替、地勢、環境、政治などのリスクとそれによる市場構造の変化が、企業の革新活動と市場競争に与える影響を解明し、革新と市場構造の動態的相互作用のメカニズムを解明することである。これらの考察は、今日の日本企業にとって重要かつ緊要な課題である。なぜなら、日本産業は国内市場の縮小と経済のグローバル化に直面し、国際市場で革新によって活動し競争していかなければならないからである。 実施した研究として、理論班は、上記の目的に従って、寡占市場モデルの展開によって市場構造や企業の戦略的革新活動に与える影響、企業の生産構造に及ぼす影響などを、企業行動と社会的厚生の両面から分析した。実証班は、作成したデータセットを利用して日本企業・産業の輸出世界シェア、海外活動比率、海外特許出願、世界集中度など、そして海外生産に伴う企業の研究所の立地への影響を計量分析した。また、事例研究も行い、計量分析を補足した。従来、重要な問題として認識されながら、国際的にも十分に取り組まれていない課題であるので、理論班の精緻な分析結果および実証班の膨大な計量分析の結果はわが国で初めての分析であり、大きなインパクトをもち、そしてまたこうした分析を促進する役割を果たすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論班は、それぞれ今年度の課題に対応した論文をほぼ完成し、グループの研究会、学会、各種セミナーなどで報告し、そして指摘されたコメントに対して改善を図ったうえで、ディスカッション・ペーパーとして公表し、また雑誌に投稿し、採択されたものもあり、また再投稿あるいはその準備を行った。また、実証班は、従来行われていない研究課題のために十分なデータがなかったが、班で独自に集計・作成したデータを基に膨大な推定を試み、興味深い結果を達成している。実証分析の結果の一部は、各種セミナーや学会などで報告され、そのうえで内外の雑誌に投稿され、またディスカッション・ペーパーとして公表された。なお、両班の結果は、国内外の研究者を招いての3月のグループ主催のワークショップでも発表され、多くの意見を受け、また両班の結果の擦り合わせも行った。 以上、新しい課題であったが、全員それだけに精力的に取り組み、ほぼ順調に進められたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
理論班は、外国為替等の各種リスクの変動による市場構造への影響を、これまで考察した寡占市場モデルに入れて拡張し、リスクが市場構造、そしてさらに企業の戦略的革新活動に与える影響、企業の生産構造(垂直統合など)の変化などを分析してきたが、それを一層精緻化する。併せて、シミュレーションによる社会的厚生効果の展開も精緻化する。この際、実証班の実証研究結果に照合しモデルを改良する。 実証班は、調査や入手した資料をもとに独自で構築したデータセットを用いて、さらに産業と企業レベルの計量分析を深化させる。この分析では、市場構造の変化(特に国際寡占化)が企業の革新活動に与える影響と、企業の革新活動と海外事業展開との相互作用、企業の海外展開が及ぼす地域経済への影響、そしてR&Dや海外活動における企業金融の影響を計量的に分析したが、それを補足するために事例研究(これまで数回実施)を強化し、そして競争政策や産業政策上の含意と提言を明らかにする。 最終年度であるために、引き続き各自の研究を深化させ、そしていろいろな機会に積極的に発表する。そして、各班の研究成果を総合化する作業を行い、これまでの結果に立脚した政策運用や制度設計に向けての政策提言を作成しこれらを論文にまとめる。最終年度の後半に、本研究成果を深めるために内外の研究者を招聘し、これまでと同様に研究会を開催し、それまでの成果の学術的意味を問う。また、本研究の成果の出版物として公開する準備を行う。
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