研究課題/領域番号 |
23330100
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研究機関 | 国立社会保障・人口問題研究所 |
研究代表者 |
金子 能宏 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障基礎理論研究部, 部長 (30224611)
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研究分担者 |
阿部 實 日本社会事業大学, 社会福祉学部, 教授 (00105032)
森 壮也 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 開発研究センター, 主任研究員 (20450463)
山本 克也 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障基礎理論研究部, 第4室長 (30415822)
武川 正吾 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (40197281)
駒村 康平 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (50296282)
佐藤 主光 一橋大学, その他の研究科, 教授 (50313458)
圷 洋一 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (50331054)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 経済政策 / 社会政策 / 社会サービス / 福祉レジーム |
研究概要 |
準市場論では必ずしも十分ではない社会保険の分析として、社会経済の変化(特に労働市場の変化)と日本の公的年金保険の課題に関する分析を行い、自営業者の生活保障と年金保険料納付行動に関する分析、年金財政検証の評価と課題に関する分析を行った。社会保険の課題は年金問題に限らず、国民健康保険の保険者となる地方自治体とも関連するため、リスクシェアと税を通じた再分配などの観点から地方財政と社会サービス提供の課題に関する分析を行った。社会経済の変化に対応した社会サービス提供を比較福祉国家論から分析することについては、福祉国家研究の最近の展開と方向性を文献研究で明らかにするとともに、社会市場論と関連する移行経済論、ジェンダー論、政権交代の実証分析などの観点から福祉レジーム論を再考し、比較福祉国家と社会サービス提供の関係に関する課題と方向性を考察した。また、福祉レジーム論と東アジア諸国の福祉国家化に関する議論を対比し、それぞれのアプローチの特徴と理論的発展の方向性について考察した。社会サービスの展開を社会福祉の原点との関係で分析するため、社会福祉事業の歴史研究を行い、今日の福祉国家・社会サービス研究への示唆を考察した。社会サービスの展開をサービス提供者の多様化と自治体との連携と接遇力を視点に分析するため、東日本大震災被災地の復興と自治体・ボランティア活動を取り上げて分析した。社会福祉事業と関連して東アジアを含む福祉国家をめざす途上国の社会サービスの展開について分析するため、障害者福祉を取り上げ、途上国における福祉理念(インテグレーション、社会的包摂など)、(障害)当事者参加、障害者福祉、社会開発・経済開発の複合的相互関係について分析を行った。東アジア諸国の福祉レジームにおける特殊性と共通性を分析するため韓国・日本の比較研究を行い、また福祉国家における地域福祉と公共性に関する分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、社会経済の変化に伴い変化する社会サービス提供とこれを踏まえた福祉国家研究の発展、政府・自治体・NPOボランティア等の社会サービスの担い手の多様化を踏まえ、国際比較データを用いて各国の経済市場・準市場・社会市場の構成を比較し、社会サービス提供の原則と仕組み・共通性と個別性に関する理論的・実証的研究を行うことを目的としている。まず、欧米先進諸国の福祉国家研究の展開を跡づけることは文献研究を進め、その一方で途上国の福祉国家への接近とその一環として東アジア諸国固有の福祉国家がどのような特徴をもつのかに関する研究は、研究代表者・研究分担者がH23年度、H24年度に東アジア社会保障論壇などの学会・ワークショップに参加・報告することにより進めてきた。準市場・社会市場の比較研究については、準市場で十分には分析枠組みに含まれていない社会保険を取り上げ、社会経済の変化(特に経済市場・労働市場の変化)に伴う公的年金保険の課題に関する分析を行った。ただし、社会保険の範囲と国地方の役割分担は各国間で異なるため、先進諸国、移行経済諸国、途上国それぞれの特徴に関する研究、相違点と普遍性に関する比較研究を、今後進める必要がある。社会保険には日本の国民医療保険やアメリカの失業保険のように地方自治体が保険者となる制度があり、社会サービスと社会保険と地方財政との関係を地方財政の経済学的分析と社会政策における地方自治体の関係に関する社会学的研究を観点に分析を進めた。地方における社会サービスの担い手は自治体のみならず、NPOボランティア等、担い手は多様である。この点は、東日本大震災被災地の一つをフィールドに復興と社会サービスの展開過程の追跡調査、社会開発と障害者福祉との関係に関する実地調査・ヒアリング、障害者の潜在的なニーズとボランティア活動に誘因を与える支援の在り方に関する分析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
社会経済の変化に伴い変化する社会サービス提供と福祉国家研究の発展、及び政府・自治体・NPOボランティア等の社会サービスの担い手の多様化を踏まえ、国際比較データを用いて各国の経済市場・準市場・社会市場の構成を比較し、社会サービス提供の原則と仕組み・共通性と個別性に関する理論的・実証的研究を行う。こうした全体的な計画の下で、以下の個別研究を進め比較検討し共有できる成果を得ることにより、社会保障政策(social policies)の新たな学際的研究を行う。○研究協力者の知見を得て、社会市場と準市場の関係を再考する。○福祉国家と途上国の社会保障・社会サービスに関する国際比較データを拡充する(金子能宏(括弧内は担当者))。○先進諸国・途上国の経済社会の変化に伴う社会サービスと社会保障政策の変化と福祉国家論の多様な展開を踏まえ、社会学・社会福祉学の点から分析を行う(武川正吾・圷洋一)。○先進国の所得保障と準市場の政策への応用に着目し、社会政策と経済政策の交互作用に関する分析を行う(駒村康平)。○社会経済の変化に伴う社会サービスの提供体制を支える地方財政、財源選択、経済厚生に関する公共経済学的研究を行う(佐藤光主)。○IT化等の社会経済の変化の影響を受ける障害者のニーズに着目し、NPOボランティア等の社会資本に及ぶ社会サービスの需給両面の変化とサービス提供に関する理論的・実証的研究を行う(森壮也)。○高齢者介護における接遇力・地域の官民連携等に着目し、社会サービスの提供条件を人的側面と費用面(年金給付等)から分析する(山本克也)。○社会サービス(現物給付)と現金給付の組合せについて、子育て支援・再分配政策を例に研究協力者(大石亜希子、他)の知見を得て公的統計の2次利用等により実証分析する。○最終年度に当たり、内外の有識者を交えたワークショップや報告書・刊行物等により成果普及を行う。
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