研究課題/領域番号 |
23330108
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高田 輝子 大阪市立大学, 経営学研究科, 准教授 (30347504)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金融バブル / テキストマイニング / ネットワーク分析 / 高頻度データ |
研究概要 |
本研究の目的は、金融バブルの生成・崩壊期における投資家の期待がどのような振舞をするかについて、ウェブ上のテキストデータを用いて解析し、投資家行動や期待の時系列変動パターンや投資家間相互作用についての有益な事実を解明することである。本年度の目標は、①最大規模の収集を目指したウェブからのデータ取得の継続を行うと共に、既に取得済みのデータを用いて、②検索クエリ時系列データ解析を用いて投資家の興味と価格変動の質的分析を行い、③投資家掲示板データを用いて投資家間の相互依存度分析を行うための実際的な問題を解決することであった。 本年度は、以下①~③の様に上記目標を達成したことに加え、当初想定していなかった金融数値データ解析面において、「ミニバブル情報発掘による金融バブルについての情報量増大」を実現した。これは、収集可能なテキストデータの期間がITバブル以降のみであることから来る本研究のデータ上の制約を緩和する貢献である(CSDA-CFE2012)。 ①データ収集:検索クエリ時系列データについて必要分の収集は完了した。投資家掲示板データについては、DOW30構成銘柄のデータ取得が完了し、現在、SP500構成銘柄を収集中である。 ②検索クエリデータ解析:株価指数を表す検索クエリ単語数と当該株価指数の時系列変動の連動性パターンを探索し、投資家の検索行動の非対称性、検索行動の株価変動への先行性、暴落直前期の検索頻度の局所的増大が内生的である可能性など、いくつかの新事実を発見した(JSS2012)。 ③投資家ネットワーク分析:投資家掲示板上での投資家間のやりとりのネットワーク図の時系列推移を、DOW30構成銘柄についてITバブル以前から直近まで解析した。ネットワークにおける相互依存度の時系列変動を集計値ベースで可視化し、市場が一方向に振れるときに投資家間相互依存度が高まることを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に示した通り、交付申請書に記載した本年度の研究達成目標はほぼ達成され、想定外の成果も得られた。当初計画に照らしても、本年度予定していた意味解析までは着手できていない代わりに、来年度や再来年度に予定していた数値分析やネットワーク分析の一部に着手できているため、概ね順調なペースで進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
【研究遂行上の問題点】対象とする投資家掲示板のフォーマットが頻繁に変更されるため、その都度、取得プログラムを修正しなければならない問題が出てきた。 【研究計画の変更】上記問題についての対応策として、プログラム修正作業頻度を最小化するためにデータ取得スピードを速めるよう、使用するIPアドレスを増やした体制を構築した。これにより、昨年度想定よりも多くの企業のデータを収集できる見通しとなり、昨年度行った「IT関連企業に研究対象を狭める」という研究計画の変更を行う必要がなくなった。 【今後の研究推進方策】DOW30構成企業についてはデータ収集が終わった。今後はSP500構成企業についてデータ取得を進めながら、DOW30企業についてのネットワーク解析を進めていく予定である。分析対象をSP500企業から更に拡大できるかどうかについては、データ取得進展状況をみながら判断していきたい。
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