研究課題/領域番号 |
23330108
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
高田 輝子 大阪市立大学, 大学院経営学研究科, 准教授 (30347504)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金融バブル / テキストマイニング / ネットワーク分析 / 高頻度データ |
研究実績の概要 |
本年度は、まず、株価変動における金融バブルの前兆現象として有意な統計パターンを明らかにし、特に金融バブル生成期から暴落直前期にかけてのボラティリティー変動パターンの有用性を示した(CSDA2014招待講演)。次に、株価データの動きと照らし合わせるテキストデータとして、ボラティリティーに注目して、逐次掲示板データと超長期新聞時系列データを対象とした解析を行った。掲示板データについては2つ、新聞データについて1つの解析を、以下のように行った。 【掲示板1:DOW30指数の高頻度株式統計-投資家掲示板対応分析】Dow30構成銘柄を対象に、米国Yahoo!Finance投資家掲示板データを最長期間取得し、対応するNYSE高頻度TAQデータとの対応関係の解析を行った。投資家掲示板データと株式データそれぞれのDOW30指数を、異なる頻度についての統計として作成し、局所相関分析を行った結果、掲示板書込内容と株価及びボラティリティ変動との間に、いくつかの新しい事実を発見した。(JSTシンポ招待講演) 【掲示板2:IPO前後の投資家掲示板-株価対応分析】IPO前の投資家掲示板データとIPO後の株価変化についての対応関係を解析し、IPO前の投資家の期待が大きいほどIPO後の株価下落が大きくなるという、株式バブル時と似た投資家行動パターンがIPOの前後にも発生していることを発見した(論文1)。 【新聞1:株式バブル前後の紙上頻出単語分析】新聞データについては、多くの株式バブルを含む1851年から直近までのNew York Times 紙と日次DOW30指数の動きとの関係について分析した。その結果、バブルの直前直後において、特有の単語群の出現傾向と株価やボラティリティーなどの株式統計の動きに、いくつかのパターンが存在することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はテキストデータと株式データの対応関係解析が進んだ。通常の株式バブルを最大個数含む超長期日次時系列分析と、ミニバブルを多数含む高頻度逐次統計解析の双方に取り組むことで、株式バブルについて利用可能データからの最大限の情報抽出を行い、有意な結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である平成27年度は、まず、既に収集した投資家掲示板書込データに、トピックモデルと呼ばれる分析手法を適用することで、投資家の期待や不安がどのように変遷・増幅し、株式市場に影響を及ぼしていくかについて観察し、新しい発見を試みる。入手した投資家掲示板データの形式の制約を考慮すると、当初計画していたネットワーク分析よりも、トピックモデルの適用の方が、本研究目的の遂行において、より適切だと判断した。そして次に、これまで発見してきた事実と合わせ、それらを利用した予測や制御の提案を試みる。
投資家心理のトピックモデル分析において明確な結果が得られない場合は、情報量を増やすため、既に収集済みのNew York Times 紙の情報も合わせて解析を行う。また、株式統計情報を活用し、株式市場の状態によってあらかじめテキストデータを分類する前処理を施すことも有用であろうと考えている。
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