研究課題/領域番号 |
23330120
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
渡辺 真一郎 筑波大学, システム情報系, 教授 (50282330)
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研究分担者 |
金澤 雄一郎 筑波大学, システム情報系, 教授 (50233854)
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キーワード | Big-5特性 / 治療的コミュニケーション / 患者満足 / 職務満足 / 看護パフォーマンス / 個人-職務フィット |
研究概要 |
本年度はプロジェクトの成功に向けて広範な準備を行った。まず、既存の看護行動研究に貢献を果たしてきた産業衛生や臨床心理学分野における理論的研究の上に、組織心理学分野は如何にユニークな貢献を果たし得るかについて、看護の現場で働く看護師を招いてディスカッションするなど、幅広い情報交換の場を設けた。海外の共同研究者とは、学会参加の機会や電子メールを利用して積極的に意見交換を行った。また、カナダから本研究に参加し、データをも提供して下さるKwantes准教授とは、彼女を日本に招いたり、米国心理学会で交流するなど、3度の対面的交流をも持った。 研究データの収集も行われ、Big-5性格特性(開放性、勤勉性、外向性、協調性、情緒的安定性)、看護行動、及び看護パフォーマンスの間の連関について分析した。産業職場を主な研究対象として発展してきた組織心理学分野の既存研究に基づく予測は、普遍特性とも呼ばれる勤勉性と情緒的安定性の2特性はパフォーマンスと正の連関を有するというものであった。看護師を対象とした本研究においても、勤勉性については類似の結果が得られた。しかし情緒的安定性とパフォーマンスの間には有意な連関は見い出されなかった。人命を扱う職場環境で働く看護師は、どのような状況においても情緒的安定を保ちつつケア看護を遂行していくことを職責として求められている。そのような職場環境の効果が個人特性である情緒的安定性の効果を上回ったと考えられる。この点は、人格心理学分野に対する貴重な貢献と言えよう。 また、特性→行動→パフォーマンス間の関係に関する様々な間接効果モデルが検定された。その成果の1つは、2012年度の米国心理学会の査読を通過した。タイトルは、When Nurses' Agreeableness Affects Patients' Satisfaction : A Mediating Role of Therapeutic Communicationと題された(5月にシカゴにて発表予定)。治療的コミュニケーションを促進することによって患者満足度を増進し得る特性は協調性であることを明らかにしたものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
8名の優秀なMBA院生による研究補助、及び筑波大学附属病院看護部の協力が得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、日本とカナダにおいてデータを収集する予定である。日本におけるデータは日本の研究チームが収集する。現在、筑波大学付属病院(N=650)が調査に参加する予定である。カナダにおいては、オンタリオにある3病院(N=600)が調査に参加する見込みである。参加者の匿名性を保持するために、参加者(看護師、及び看護師長)が記入済み質問票を調査者宛に直接郵送できるよう、切手を貼付した返信用封筒を配布するなどの手続きを踏む。日本におけるデータは研究代表者(渡辺真一郎)宛に送付される。カナダにおけるデータはKwantes氏が回収・入力・電子化し、そのファイルを研究代表者宛に送付する。我々調査チームは、以上の上司-部下ペアーをパネルとし、1年間隔の時系列データを構築し、主要変数間の関係を時系列分析することを計画している。
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