研究概要 |
本研究の目的は,個人レベルと企業レベルというマルチレベルで観察される変化に注目して,組織消滅に伴う組織能力の解体と競合企業への能力移転メカニズムを検討するものである.具体的には,四大監査法人の一角を占め2007年に解散した中央青山監査法人(解散時はみすず監査法人)の事例に注目し,同監査法人の取引関係と公認会計士移動を追跡する大規模パネルデータを構築し,組織消滅を契機にした組織能力の解体と企業間能力移転メカニズムを,組織論と監査論の視点から学際的に検討することにある. 最終年度となる平成25年度は,平成24年度に引き続き,先行研究の文献サーベイに基づく研究課題の導出・検証と作業仮説の構築・深化作業を行った.その成果として,1960年から2012年までに上場企業を監査した個人会計士および監査法人2037の名称リスト・コード化作業および5077社の上場企業名称リスト・コード化作業を終了した.また,監査報酬の決定プロセスを説明する実証研究を推進すると共に,主要監査法人383社の合併プロセスを歴史的に解明する作業を推進した.その結果,日本の監査法人が三大監査法人へと集約される歴史的合併プロセスを系統図的観点から網羅的に把握するデータベースも作成し,制度変化のプロセスを新制度学派の組織理論を援用して分析した. 成果の一部は,2014年6月に開催されるワークショップ(European Theory Workshop at Amsterdam Business school)および国際学会(European Group for Organizational Studies at Rotterdam Business School)で研究成果を発表する(査読済・発表決定済).
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