1.人材ポートフォリオに関する研究課題のため、小売企業の労使を対象とするインタビュー調査を実施した。インタビュー記録を作成したが、匿名性確保のためそれ自体の公表は控え、アンケート調査に基づく分析の解釈に活かすかたちで下記の研究成果につなげている。 2.小売業を組織する産業別組合実施の組合員アンケート調査の再分析および上記事例研究からの知見をもとに、小売企業(食品スーパー)について、事業戦略とパート社員の仕事特性・意識との関係について分析した。分析の成果は、日本商業学会関西部会(2014年7月26日)にて報告している(発表表題「食品スーパーにおける従業員の意識調査分析」)。具体的には、事業戦略に関して、品揃え提案志向かつ競争的価格志向の「アソートメント型」と、非品揃え提案志向かつ競争的価格志向の「ローコスト型」との間で、店舗のパートタイマーの仕事特性・意識を分析し、事業戦略に応じたパート社員の活用のあり方(人材ポートフォリオ)の違いとそれに対応した人事管理上の課題の違いを明らかにしている。 3.人材ポートフォリオに関し、正社員についても雇用区分が多様化しつつある現状を踏まえ、小売業を含む幅広い産業の正社員へのアンケート調査の再分析から、正社員のキャリアと就業意識の多様化の現状について分析した。分析の成果は、労働政策研究会議(2014年6月28日)にて報告(発表表題「正社員のキャリア志向とキャリア ─多様化の現状と正社員区分の多様化」)するとともに、本研究の成果として論文(「正社員のキャリア志向とキャリア ─多様化の現状と正社員区分の多様化」『日本労働研究雑誌』No.655)を公表した。同論文では、正社員において、正社員区分の多様化のほか個別的な仕事管理をつうじてキャリアの多様化がみられることを明らかにし、正社員の就業満足度を手掛かりに正社員区分の多様化に対する含意を検討している。
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