研究課題/領域番号 |
23330133
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
黒田 兼一 明治大学, 経営学部, 教授 (60148575)
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研究分担者 |
清山 玲 茨城大学, 人文学部, 教授 (00236069)
鬼丸 朋子 國學院大學, 経済学部, 教授 (00325557)
行方 久生 山形大学, 人文学部, 教授 (00455883)
戸室 健作 山形大学, 人文学部, 准教授 (60542024)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | 地方自治体 / 雇用形態 / 成果(業績)主義 / 人事査定 / ワーク・ライフ・バランス / パートタイム雇用 / 派遣と請負労働 / 労働紛争調停制度 |
研究概要 |
本研究事業の2年目にあたる平成24年度は英国の地方公務員の人事労務、労働時間とワーク・ライフ・バランス、非正規雇用の実態調査を目的に、英国への訪問調査を実施した。自治体国際化協会のロンドン支部、ロンドン・メトロポリタン大学Working Lives Research Institute、Unite-Union、ロンドン西部のスペルソーン市、マンチェスター市、公務員労組ユニソン北西部支部、マンチェスター大学ビジネススクール、労使紛争調停・仲裁機関ACAS等を訪問し、懇談と資料提供を受けた。 これらの情報と資料から以下のことが明らかになった。まず第1に、イギリスの地方公務員制度は、日本のように「地方公務員法」に基づくものではないこと、第2に、従って民間企業における採用・処遇・解雇とまったく同じであり、この点で官民格差はないこと、第3に、日本と同様に、地方自治体の財政は逼迫状態であり、人員削減とアウト・ソーシングで対応しており、第4に、それでも雇用慣行の違いから、日本のような非正規雇用は増大しておらず、請負や派遣は例外的であった。第5に、賃金や昇進などの人事管理をみると、かつて1980年代~90年代に一時的に「成果主義(業績主義)」賃金制度導入した自治体もあったが、現在はそれを採用している自治体は皆無に近いこと、さらに第6に、男女賃金格差を是正する取り組み、フルタイマーとパートタイマーの格差是正、労働時間短縮への取り組み(ワーク・ライフ・バランス)、アウト・ソーシング事業先での賃金格差是正の規制など、日本の地方自治体との大きな違いが見られた。最後に、労使紛争に伴う調停・仲裁制度が独自の機能を果たしていることが明らかになった。 これらについては「イギリス地方公務員の雇用と人事・処遇」と題して雑誌『自治と分権』誌に掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
採用決定が遅れたことで、初年度は12月からの開始であったが、それ以前からの研究で日本国内の地方自治体へのヒアリングやアンケート調査を荒削りではあるが実施していたので、第2年目にあたる本年度は、計画通りイギリス調査を行った。ただ研究分担者の一人が退職のため急遽協力者に変更した。これに伴って旅費や謝金等の執行実績が、申請時とは申請当初とは違ったものになってしまったが、しかしその協力者の全面的な協力を得て、概ね、ねらい通りの情報と資料を入手できた。 それはまず第1に、1年目の日本でのプレ実態調査によって、日本の状況を踏まえた日英比較の視点による質問項目を手際よくまとめることができたことが大きい。また第2に、事前にイギリス地方公務員制度に関する先行研究整理をめざして、幾人かのゲスト講師を迎えて研究会を行うことがができた。さらに第3として、日本の地方公務員の労働組合と自治体国際化協会から全面的な協力が得られ、イギリスでの訪問自治体、訪問研究機関、労働組合などとの連絡と調整、アポイントメントなどが比較的容易であったことが大きい。また、これら二つの機関は、25年度の日本の調査に関しても全面的な協力を約束して下さっていることも心強い状況である。
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今後の研究の推進方策 |
研究事業の最終年度の平成25年度は、本年度のイギリス調査を踏まえて、日本の調査を実施する予定である。現在、東京都、神奈川県、大阪府、京都府と調整中である。すべて都道府県単位であるので、研究目的からすると不十分な結果しか得られない虞がある。特に、雇用と処遇のジェンダー問題や労働時間やワークライフバランス問題などは、都市地区と地方(過疎)地区とでは大きな違いが出てくる可能性がある。場合によっては調査地区を増やすことも考慮する。 最後に、3年間の研究事業をまとめて、「地方公務員の雇用・生活、成果主義人事・給与」に関して、日本の実態を踏まえた提言することを目的として、公刊することを計画している。
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