研究課題/領域番号 |
23330156
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研究機関 | 東京芸術大学 |
研究代表者 |
毛利 嘉孝 東京芸術大学, 音楽学部, 准教授 (70304821)
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研究分担者 |
岩渕 功一 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (10327728)
伊藤 守 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30232474)
清水 知子 筑波大学, 人文社会系, 講師 (00334847)
イシ アンジェロ 武蔵大学, 社会学部, 教授 (20386353)
塩原 良和 慶応義塾大学, 法学部, 准教授 (80411693)
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キーワード | 文化 / メディア / 多文化主義 / 文化的市民権 / 公共性 |
研究概要 |
グローバル化によって急速に進む多文化社会において、どのようなメディアの「公共性」が可能なのか。デジタル化の時代、多種多様な人々の「文化的市民権」をどのように構想できるのか。本研究は、既存の「公共性」や「市民権」の議論を踏襲しつつ、近年の国内外の議論や政策を参照しながら、新しいアイデンティティと「公共性」、「文化的市民権」の関係を明らかにしようというものである。 平成23年度は(1)これまでの議論の整理(2)多文化社会の聞き取りと研究会の開催(3)海外に住む日本人に対する聞き取り(4)研究インフラの整備、の四点を大きな方針として活動を行った。 (1)と(2)については、隔月のペースで会議または研究会を開催した。特に10月に北九州市で開催された公開シンポジウム「多文化社会における新たな〈公共性〉へ向けて」では、議論の整理とともに、九州地区のこれまでのNPOやNGOの活動、支援団体、メディアに対する調査と情報交換を行った。この成果は、本研究プロジェクトの報告書『公共性の再創造』(多文化メディア市民研究会発行全72頁)で読むことができる。また分担者二名も寄稿している『マス・コミュニケーション研究』79号は、この領域における研究状況の現状のベーシックなサーベイになっている。 (3)に関しては、研究会を共同研究の基盤として活用するとともに、本年度は研究代表者の毛利が英国、共同研究者の岩渕が豪州、イシがブラジル、イギリスの海外調査を行った。国内については、北九州におけるシンポジウムを中心に福岡/北九州地区の聞き取り調査を行った。(4)については、研究組織「多文化メディア市民研究会(MCMC=Media & Citizen-ship in Multi-Cultural Society)」を立ち上げ、HPを開設した(http://mcmc.main.jp/)。この研究組織を中心に、研究会の開催、基本的文献や情報、研究成果の共有、そして情報発信を継続的に行ってきた。 今年度は東日本大震災の影響もあり、メディアと「公共性」、「市民権」をめぐる状況と議論が激変した。本研究は、その変化を分析し、理論化する研究としての意義あるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度ということで、研究発表がやや少なく感じられるが、研究会メンバーで初年度報告書をかねるシンポジウム記録「公共性の再創造」を発行することができた。近年グローバリゼーションとデジタルメディア技術の登場により大きく議論が変容しつつある中、国内外の研究と比較しても先端を切り開く研究をしていると自負しており、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
全体の研究計画の提出は東日本大震災以前だったが、マスメディアと新しいデジタルメディア、とりわけソーシャルメディアの影響の関係は、この一年で大きく変容しつつある。今年度は、研究テーマの中に東日本大震災の影響をきちんと組み込み、東日本被災地での調査や研究会、シンポジウムを予定している。急激な変化に対応すべく、技術的な動向に関心を払うとともに、研究成果の発信においても、現在のHPを充実させていく予定である、それ以外は、研究計画に関する大きな変更はない。二年次は、一年目の研究方法を維持しつつも、積極的に国内外の学会、学会誌、図書等で研究発表を行って行きたい。
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