研究課題/領域番号 |
23330159
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川端 亮 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00214677)
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研究分担者 |
弓山 達也 大正大学, 人間学部, 教授 (40311998)
黒崎 浩行 國學院大學, 神道文化学部, 准教授 (70296789)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 社会学 / 宗教学 / 宗教社会学 / 社会調査法 / 国際比較調査 |
研究概要 |
平成24年度は、7回研究会を行い、関連領域の研究者から専門的助言も得て、これまでの予備調査の分析結果を検討し、体験談に関する調査票を作成した。調査票は、実験計画法的に要因を入れ替えた16パターンに特別な4パターンを加えた合計20パターンの体験談を用意し、それぞれを異なる調査対象者に読んでもらい、それを受け入れられるか、自分の経験と矛盾しないかなどの15項目に答える形式である。また、宗教意識については、宗教的な心は大切と思うか、神は万能であるか、運命は変えることができないと思うか、などの34項目を尋ねており、日米の宗教意識の違いや体験談を読む前と読んだ後では宗教意識が変化するかどうかも調べられる調査設計になっている。 調査は国際比較調査に実績のある調査会社に委託し、日本とアメリカの20歳から69歳までの男女を対象に行った。日本の調査対象は、調査会社の郵送パネルを用いて、郵送法で実施し、1238の有効回答を得た。アメリカの調査対象は、アメリカの調査会社のオンライン調査パネルを用いて、オンライン調査により、1084の有効回答を得た。 また、11月9日にフェニックスで開催されたSociety for the Scientific Study of Religion の2012 Annual Meetingで、宗教意識についてのこれまでの研究成果をThe Measurement Invariance of Religiosity between the U.S. and Japanと題して発表し、日本に関心のあるアメリカ人研究者から有益なコメントを得た。 さらに体験談の調査方法について、予備調査の結果を踏まえた論文、「宗教的体験談の受容」(『大阪大学大学院人間科学研究科紀要』39、199-215頁、2013年3月)を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
国際比較調査に対して非常に高い能力を持っている調査会社に調査を委託することができた。日米の調査会社はいずれも、調査票の翻訳に精通しており、日本語で作成した宗教に関わる体験談と宗教意識の質問項目に適切な修正案を提示し、英語調査票があらかじめ用意していたものよりも格段に優れた調査票となり、その結果、日本のみならず、アメリカにおいても調査票がわかりにくいという感想がなく、その結果当初の想定よりも多い回収数に結びついたと考えられる。 より質の高い、より多くのデータが得られたことは、当初の予想以上であり、当初の計画以上に質の高い研究ができると見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成24年度に実施した日米の体験談調査データを分析し、研究会でデータ分析の結果を検討した後に、学会発表し、さらには論文を執筆する予定である。データ分析の結果は、研究分担者とともにスピリチュアリティの観点、日本の伝統宗教、基層信仰の観点からも検討するほか、宗教的多元主義、寛容性などの宗教学の見地からも解釈が可能であり、またライフヒストリー研究の観点からも解釈できると予想される。東京と関西で関連する研究分野の研究者を招いて研究会を開催し、データ解釈の妥当性や改善点などのコメントをもらい、よりよい分析、よりよい解釈に洗練させる。 また、データ分析の結果は11月8-11日にボストンで開催されるSociety for the Scientific Study of Religionの 2013 Annual Meeting において発表を予定している。主として日米比較について発表し、海外の研究者のコメントをもらい、さらに分析結果の質を高める。 以上の過程をへて、体験談の受容に関する日米比較の観点からの英語論文を執筆するほか、宗教意識に関しても論文にまとめる。宗教意識は日米で大きく異なるといわれているが、その違いを検証するとともに、日米の共通点を見いだし、それをもとに共通の尺度でキリスト教社会とその他の社会の宗教性を測定することを目指す。さらには宗教意識が体験談を読むことや日常の嬉しいことや悲しい体験によって、変化するのかどうかについても分析し、論文としてまとめていく。
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