研究分担者 |
高坂 健次 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60027977)
古川 彰 関西学院大学, 社会学部, 教授 (90199422)
斎藤 友里子 法政大学, 社会学部, 教授 (80278879)
浜田 宏 東北大学, 文学研究科, 准教授 (40388723)
中野 康人 関西学院大学, 社会学部, 教授 (50319927)
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研究概要 |
本研究は,グローバル化する現代における人々の相対的剥奪を,理論的・実証的に解明することを目的とする.具体的には,(1)質的・量的データによる不平等状態と人びとの満足/不満感との関連の記述,(2)数理モデル,シミュレーション・モデルによる相対的剥奪メカニズムの解明,(3)相対的剥奪のメカニズムを考慮したマクロレベルでの資源配分状況の指標の開発と応用,を目指す. 今年度は,計量班,フィールド班,モデル班,指標班の各研究班の構築を計ると同時に、実質的な研究をスタートさせた. このなかでも,数理モデル班での研究に大きな進展があった.一つには,Yitzhakiの相対的剥奪モデルと指数に依拠しながら,ある種の経済発展下における富の増大と平等化が,人々の相対的剥奪を高めるというパラドックスを理論的に示した.そのほか,Yitzhakiモデルを応用した計量分析や,主観的地位分布の説明モデルを構築した.これらの成果は,2012年2月にインドで開催された国際社会学機構(IIS)第40回大会におけるセッション"Emerging Frontiers of Relative Deprivation Theory"(座長:高坂健次・研究分担者)において報告されたほか,国内の学会でも成果報告を行った.また,関連する階層帰属意識モデルの分野においても研究成果を挙げた. また,フィールド班・計量班では,次年度ネパールで実施予定の量的調査を見据えた資料収集と予備的フィールド調査を実施した. さらに,指標班では,Yitzhakiの相対的剥奪指数をもとに,相対的剥奪の総量,そして不平等度を機会不平等に起因するか否かによって分解する手法を開発し,現在さらに手法の検討と応用に向けた研究を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
モデル班で取り組んでいる経済発展と相対的剥奪のパラドックスの定式化について,大きな進展があった.また,フィールド班・計量班では次年度のネパール調査に向けての準備が整った.その他の関連研究においても順調な進展が見られた.こうしたプロジェクトの進展のために研究会を3回開催し,研究分担者・研究協力者間で活発な意見交換を行った.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,モデル班では引き続きYitzhakiの相対的剥奪モデルの発展と応用を主軸に,経済発展・不平等・幸福・相対的剥奪の関係を理論的に検討していく.フィールド班・計量班では,予算等の制約もあって,ネパールにおけるフィールド・量的調査を重点的に取り組むことにする.特に次年度はカトマンズ近郊のKirtipurにおける500サンプル規模の調査を実施する. また,計量班・モデル班による小集団実験や実験的アンケート調査の実施については,関連する他の研究プロジェクトとの役割分担を計りながら,計画・実施することにする.
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