研究課題/領域番号 |
23330172
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
丸山 定巳 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (00039968)
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研究分担者 |
花田 昌宜(花田昌宣) 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (30271456)
宮北 隆志 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50112404)
中地 重晴 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (50586849)
下地 明友 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (90128281)
原田 正純 熊本学園大学, 水俣学研究センター, 研究員 (00040519)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 水俣学 / 健康被害 / 公害 / 水俣病 / 社会的影響評価 |
研究概要 |
この研究は、水俣学研究の経験と成果を応用して、水俣病の負の経験を明らかにし、将来に生かす教訓を国内外に発信する試みである。水俣病は発生の公式確認から57 年を迎えているが、問題は山積している。水俣病特措法に基づく救済策や原因企業の分社化手続きが進められ、地域振興策も打ち出されている。その結果、これまで差別・偏見のかげに隠れていた被害者が表面化し、その総数は未だ公表されないものの少なく見積もっても6万人を超えており、これまでの認定患者数や1995年の政治解決時の救済対象者数を加算して推計すれば10万人規模の被害者が存在するものと推定されることが明らかとなった。 この現状を社会的影響評価という手法を援用して分析し、学際的研究組織において地元との協力の上で、定性的かつ定量的に、現状の問題点と今後の課題を明確に示していくことを研究課題とし、昨年度は現地調査ならびに研究会、シンポジウムを実施した。 調査・研究の実施に当たっては、四つの班に分け、現地密着型の調査研究を大学院生らを巻き込みながら実施した。 [医療と健康影響評価班]では、従来の研究サーベイを踏まえて、定期的(月に二回)に水俣学現地研究センター(水俣市)を拠点に患者の検診・ヒアリングを継続的に実施。その一部は、連携研究者である田尻雅美、井上ゆかりが公衆衛生学会にて口頭報告を行った。[環境影響と地域構想班]は、水俣・芦北地域戦略プラットフォーム(地域の課題を検討する事業者、NPO、自治体関係者等の協働の場)をベースにした住民参加による地域づくりの検証・評価(参加行動型調査)に取り組み、HIA(健康影響評価)に関する国内外の研究サーベイを踏まえた研究を実施するとともに、その成果を公害発生国であるタイで二回にわたりシンポを開き報告した。[社会影響・経済分析]班は、資料の収集ならびに被害者団体へのヒアリングを実施、継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水俣病特措法に基づく救済策の実施が被害救済体系の改変をもたらすとともに、中央省庁による地域づくりが急速に動き出したため、それへの対応に追われた。また医療研究班の研究分担者(原田正純)ならびに文化と価値変容班の責任者(足立明)が病気療養後、相次いで他界したため、現地調査の規模を縮小しつつも、研究協力者の積極的参加を得て、対応できた。また、7月に開催を予定していた胎児性水俣病にかかるシンポジウムを2013年2月に延期し、熊本ならびに水俣市で開催できた。現地調査として、水俣市及び対岸の天草市を計画していたが、天草市のほうが水俣病特措法の実施にかかる地域指定の問題が焦点化し、状況が不安定となったため、情報収集にと止めるとともに、芦北地域の調査を実施した。 社会的影響評価にかかる理論的実証的研究の進化のために12月1日国際シンポを開催した。 また、1月に水俣病事件研究交流集会を予定通り実施し、全国からの参加者とともに研究討議を深めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大幅な変更はなく、調書にそって進めて行く。本年度は研究取りまとめの年度に当たる、過去2年間の調査記録を整理し、さらに各班の調査研究を継続的に深化を図りつつ実施し、研究成果の集約を展望する。なお、社会的影響評価にかかる主題で、地域や健康に及ぼす影響はこれまでの調査でかなり明らかになってきているので、さらに継続していくが、自然環境とりわけ海岸部の環境に及ぼす影響とその回復状況がデータ整理の結果、ほとんど未解明であることが明らかになり、環境影響班において、最低限のデータの欠落を補う調査を実施する。社会的影響班では、本年4月16日に水俣病認定にかかる最高裁判所の判決がだされ、水俣病の認定基準や制度設計の見直しが社会的に要請されており、この点に注目しながら、水俣病被害の評価の方法論的課題を整理した上で、政策評価も実施する。
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