研究課題/領域番号 |
23330183
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研究機関 | 東京工科大学 |
研究代表者 |
榎本 美香 東京工科大学, メディア学部, 講師 (10454141)
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研究分担者 |
岡本 雅史 立命館大学, 文学部, 准教授 (30424310)
山川 百合子 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 准教授 (40381420)
松嶋 健 京都大学, 人文科学研究所, 研究員 (40580882)
串田 秀也 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (70214947)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 精神医療 / 実践 / コミュニケーション / 会話 / 対人関係 |
研究概要 |
1.相互行為分析/心理統計分析による多相的コミュニケーション介入(Polymorphic Communication Intervention;以下PCI)に有効なコミュニケーション変数選択 参与者の人数を増やし,活動の内容を変えたとしても,精神障害や高次脳機能障害などの障害名が与えられた人々(the Communication Challenged;以下CC)が会話から取り残されコミュニケーションに参加できない状態が続くなら多声化や多重化は生じない。また,会話のメモやビデオ観察などを行ったとしてもそれが単に自他批判や疾病の指摘などに留まり将来の行動変容に繋がらないならば,メタ認知化が成し得たとはいえない。そこで,会話の局所で生じている相互行為のミクロな様相を相互行為分析を通じPCIに有効なコミュニケーション変数を抽出し,他者との関係性に大きく寄与する変数を個人差を配慮した一般化線形モデルなどの心理統計分析により選択した。 2.認知語用論分析によるPCI前後のコミュニケーションモデル考案 1.によって選択されたコミュニケーション変数が関係性変容に対しなぜ有効なのかを検証するためには,多相的コミュニケーションを通じて主体内,主体間の変化がどのように生じていくかというコミュニケーションモデルを考える必要がある。PCIにおける多声化/多重化/メタ認知化によって相互のコミュニケーションの様相(=表出面・受容面)がどのような連関を持ちながら変化するかを適切に説明する認知-行動モデルを考案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
相互行為分析/心理統計分析による多相的コミュニケーション介入(Polymorphic Communication Intervention;以下PCI)に有効なコミュニケーション変数選択と認知語用論分析によるPCI前後のコミュニケーションモデル考案をもとに,多相的コミュニケーションを誘発する活動タイプや参与者を導入するPCIプログラムを考案する段階に達した。例えば,雑談では,口数の少ない参与者に対する「この件についてXさんはどう考えますか」などの発言が行われ,多声化やメタ認知化が自然に発生する。また,他の参与者の意見を言い換えたり第三者的発言をする人物が出現すると,参与者間でメタ認知化が生じる。ここでは,多相的コミュニケーションを引き起こす活動や会話媒介者の投入など,具体的なPCIプログラムを立案中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23,24年度におこなった研究成果をもとに,多相的コミュニケーションを誘発する活動タイプや参与者を導入するPCI(Polymorphic Communication Intervention;以下PCI)プログラムを考案する。多相的コミュニケーションを引き起こす活動や会話媒介者の投入など,具体的なPCIプログラムを全員で立案する。医療スタッフの研究分担者、研究協力者はそれを各施設で実践し,精神障害や高次脳機能障害などの障害名が与えられた人々の苦悩に対してより高い治癒的可能性をもつPCIプログラムへと改案を行う。研究期間終了時には,多くの精神医療現場で実践可能な具体的PCIプログラムを公開する。また,年度末には3年間の研究成果を発表・議論する公開シンポジウムを実施する。
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