研究課題/領域番号 |
23330188
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
峰島 厚 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (30149512)
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研究分担者 |
大岡 由佳 武庫川女子大学, 文学部, 講師 (10469364)
山本 耕平 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (40368171)
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キーワード | 社会福祉 / 障害者施設 / 福祉施設従事者 / 福祉労働 / メンタルヘルス |
研究概要 |
本研究は、障害者施設従事者のメンタルヘルス予防対策の検討を目的とする。研究視点としては、事前の量的調査から、20歳代の中堅職員と40歳代の管理職とくに女性に不全状況が集中していることから、成人期の発達、職階などのキャリア発達、家族・家庭での役割発達とおいた。 1年目は、これらの視点を、構成員の主たる分野である福祉・福祉臨床・精神保健でそれぞれに文献等で深める基礎作業とともに、20歳代の中堅職員のメンタルヘルス実態と課題を、発達、キャリア発達に即して検討することを主たる課題にした。 20歳代の中堅職員のメンタル不全の背景には、量的調査から、仕事量の多さからくる職業的アイデンテイテイの揺れや評価に対する不安があると明らかにされてきた。さらに今回実施した32人のインタビュー調査から、それらが3年目、5年目の課題として見られることが明らかになった。具体的には、仕事量の多さを背景としつつも、仕事を振り返られるようになって新たな責任を担うようになる3年目と、それに加えて結婚や子育ての責任が生じる5年目の課題である。 20歳代の中堅職員のメンタル不全についても、アイデンテイテイの揺れという発達、職業的なそれの揺れ、さらに家族・家庭役割の発達が、輻輳的に関係しており、主因の転換で節目が形成されてくると明らかにされた。 したがって、これらを現場職員の講習会(必要な気づき、必要な対応、などを講義とロールプレイで実施)で検証してきたが(中堅、管理職、若手で階層別に実施)、当事者の発達、キャリア発達など職業生活に関することではおおむね有効性が確かめられてきたが、家族・家庭の役割発達という私生活に関する課題に対しては今後の課題になったと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は量的調査から典型施設を抽出し集中的に介入していく方法を構想していたが、現場との議論で断念せざるを得なくなった。しかしそれに代わって、個別調査の広がりへの協力と、その現場での検証としての講習会という現場の協力体制を組むことができた。そして20歳代の中堅職員に対してそれらを実施し、新たな課題と予防方策の在り方を明らかにできた。したがって、今後の主たる課題、40歳代の管理職とくに女性への予防対策、職場復帰プログラム作成についても、20歳代と同様な方法で実施できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、仮説に即した20歳代・40歳代・休職状態になった人という層を設定し、より多数の個別インタビュー調査と事例検討をすすめ、その結果分析の現場との往復による検証(講習会の実施、手引きの作成)もすすめていく。 しかしこれらは質的な調査であり、普遍化するためには、量的調査の裏付けが必要となる。したがって前記の作業から明らかにされた点を中心に、全国の事業所を対象とするメンタルヘルス実態と対策等の質問紙法・選択肢法による調査を実施する。さらに大阪障害者センター加盟施設の職員に対する職階・キャリア発達の実態と意識に関する質問紙法による調査を実施する。 なお職員のメンタルヘルス状況を大きく規定する労働条件に関する制度改革は、さらに続くと想定される。動向の実際を見極める研究も重要な課題にせざるを得ない。
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