研究課題/領域番号 |
23330191
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
筒井 孝子 国立保健医療科学院, 統括研究官 (20300923)
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研究分担者 |
松繁 卓哉 国立保健医療科学院, 医療福祉サービス研究部, 主任研究官 (70558460)
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キーワード | 社会福祉関係 / 政策研究 / 応用数学 / 解析・評価 |
研究概要 |
本研究の目的は、第一に、地域包括ケアシステムの整備に包含されることとなったインフォーマルな互助機能を可視化し、これらの定量的な評価をするための尺度の開発をすることである。なお、その際には、互助機能を測定するための互助に関連する概念の整理を行うことも目的とする。第二に、この互助機能の評価を臨床現場に応用するために地域包括ケア圏域を全体として評価する方法を確立し、第三に、個人別、圏域全体の互助機能を評価した結果を自治体および地域包括支援センター職員がどのように利用すべきかを研修するための資料(マニュアル)を提供することを目的としている。 平成23年度は、これまで国の委員会等で、紹介され、互助機能が高いと専門家から臨床的知見を得ている地域共同体へのヒアリング調査を実施し、インフォーマルな互助機能についての基礎資料を得た。これらの結果を地域包括ケアシステムの整備を担う保健医療福祉の専門職や地域福祉、社会福祉、保健、医療、介護、社会システム等を研究領域とする学識経験者らによる委員会において検討し、この委員会によって、本研究の基礎となる日本の地域包括ケアにおける「互助」機能について、他の「自助」「共助」「公助」との関係性から明確にした。その結果、日本におけるChronichcaremode1を基礎とした地域包括ケアシステムとしての概念整理を行い、このモデルにおける互助機能の位置付けを明確にした。 具体的には、今日まで政策として検討され、モデル的に実行されてきた地域包括ケアシステムのアプローチは、コミュニティからのアプローチに重点が置かれていたが、今後は、「セルフマネジメントへの支援/個人の能力向上」を前提とした、「提供システムのデザイン/保健・医療サービスの方向転換」をはじめとする医療分野の専門職の臨床的サービスや治療的サービスという枠組みへのアプローチが有用であることを示した。このケアシステムは、一般開業医や専門医との協働を前提とし、これを基礎とした個人やコミュニィティをサポートするアプローチという形式となるが、国際的にも、このアプローチはintegratedcareの文脈につながるものであり、これを実現できる方法を検討することが、互助機能を強化するためにも重要であることが確認された。 この成果は、地域包括ケアシステムの構築に際して、これまでの福祉(生活支援サービスの推進)の提供者や提供主体をどのように考えるべきかといった内容だけでなく、医療システムとの統合が互助機能に影響を及ぼすことを臨床的に明らかにしたという点で示唆を与えるものであり、重要と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、本研究の基盤となる日本の地域包括ケアにおける「互助」機能について、ヒアリング調査を実施した結果から、「自助」「共助」「公助」との関係性を明確にすることができた。また、検討委員会では、当初計画していた定義の仮りの設定だけでなく、互助機能を強化するアプローチがあることも明らかにすることができた。この重要な結果をふまえ、その後、計画していた互助を評価するための評価項目については、より実態に即した評価をするために、再度、詳細な検討をすすめることになった。24年度には、これらの重要な成果を勘案した調査項目を検討し、自治体の地域包括支援センター職員や住民等へ調査を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
24年度は、検討委員会で互助を評価するための評価項目について、再度、吟味し、任意の自治体の地域包括支援センター職員やこれらサービスを享受する地域包括ケアシステムの先進地の住民等を対象に調査を実施する。調査対象として、地域包括ケアシステムのケアサービス基盤として重要な24時間の定期巡回型サービスが実施されている圏域を加えることを予定している。 また、23年度から開発に着手している複雑ネットワークを応用した社会ネットワークを対象とした新たな数理モデルの開発を継続する。なお、この数理モデルの開発の試行には、23年度に定義された地域包括ケアシステムにおける互助機能および、互助の具体的内容を調査項目とした先行調査データを利用する。
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