研究課題/領域番号 |
23330196
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浦 光博 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 教授 (90231183)
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研究分担者 |
入戸野 宏 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (20304371)
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キーワード | 排斥検知 / 排斥のインパクト評価 / 排斥のインパクト制御 / ERP / EEG / fMRI / NIRS / サイコイパシー |
研究概要 |
1.排斥の検知過程について2つの実験によって検討した。 1)被排斥経験中の認知処理過程と情緒的反応の推移についてERPならびにEEGを用いて検討した。分析の結果,P3振幅は排斥経験の初期に増大し後期に向けて速やかに減衰するのに対して,皺眉筋の活動は経験初期から後期にかけて徐々に増大することが明らかとなった。 2)fMRIを用いた実験によって排斥検知の神経基盤の同定を試みた。被排斥経験の認知処理過程における予期違反の影響を統制してもなお,排斥によるdACCの賦活が認められた。 なお,これら2つの研究についてはすでに国際誌に投稿済みである。 2.排斥のインパクト評価過程で重要な機能を果たすと考えられる自己評価の維持・高揚に集団の社会的価値と自己観が及ぼす影響について調査研究によって検討した。分析の結果,独立的な自己観を持つ者は自己評価の維持・高揚のために内集団への同一視を戦略的に行う可能性が示唆された(Asian Journal of Social Psychologyへの掲載論文)。さらに,排斥のインパクト制御に及ぼす心理社会的資源の影響を検討するためNIRSを用いた実験を行った。分析の結果,幼少期における家庭の社会経済的地位の水準が非排斥経験後のrVLPFCの賦活を調整することが示された(Social Cognitive and Affective Neuroscienceへの掲載決定論文)。 3.個人の排斥的な行動の生起過程についても検討した。個人変数としてのサイコパシー傾向と環境変数としての家族からのサポートが反社会的罰行動に及ぼす影響について実験的な検討を行った。結果は,家族サポートの少なさがサイコパシー傾向の高い者の反社会的罰行動の表出を強めることを示していた(Psychologyへの掲載決定論文)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
社会的排斥の検知,排斥のインパクト評価ならびにインパクト制御という3段階のそれぞれについて当初の計画どおりに検討を行い,いずれも具体的な成果となって現れている。これらに加えて,今後の検討に向けて,インパクト評価と関わる個人特性の同定に着手するとともに,排斥行動に関わる個人特性と環境要因についてもオリジナリティの高い知見を得た。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題遂行の初年度である本年度においては上述のとおりきわめて順調に研究が進展した。今後もこれまでの成果を踏まえ,社会的痛み制御過程について詳細な検討を重ねる。研究遂行上,特に深刻な問題点はない。あえて前向きの課題を挙げるならば,自己の対人関係調整機能における過去経験の体系化のメカニズムについて,近年急速に関連研究が増大しているノスタルジアの機能についての知見をどのように本研究課題に融合させるかは重要な課題であると認識している。しかし,これについてもすでに予備的な検討に着手しており,順調に進めば来年度の計画に組み込むことも可能になると予想される。
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