研究課題
本研究は「ワーキングメモリ」をキーワードに,1人ひとりの子どもの学習ニーズに合った先進的なカリキュラム開発と教育のシステム作りを目指している。本年度の目的は,ワーキングメモリの小さい児童・生徒の学習を支援するための方略リストを作成し,クラス単位でワーキングメモリのアセスメントを行い,ワーキングメモリの小さい子どもに注目した支援方略を実施し,その効果を検討することであった。まず,6つの授業場面(授業の構成,学習形態・学習環境・学習のルール,指示の出し方・発問や説明の仕方,教材・教具,板書の工夫・ノート指導,子どもの発表・作文)における支援方略について,情報の整理,情報の最適化,記憶のサポート,注意のコントロールの観点から分類したリストを作成した。そして,2つの小学校および2つの中学校で教師を対象に講習会を行い,ワーキングメモリと学習の関係,および支援方略がワーキングメモリの小さい子どもだけでなく,クラスの子どもすべてにとって分かりやすい授業になることを説明し,学校全体で授業のユニバーサルデザインを考えることの意義を伝えた。同時に,子どものワーキングメモリのアセスメントを行い,他方で,授業態度について,担任教師による評定および観察によって調べた。その結果,以下のことが明らかになった。第1に,従来型の授業において,ワーキングメモリの小さい子どもは,授業参加が少なく,教師から注意散漫で,落ち着きがないと見なされる傾向が強かった。第2に,リストに挙げた方略を日常的に実践している授業では,ワーキングメモリの小さい子どもが,高い子どもと同様,「授業に参加している」と教師に見なされていた。第3に,リストに挙げた方略を実践した授業では,ワーキングメモリの小さい児童・生徒の授業参加が向上し,ワーキングメモリの平均的な子どもとの違いがなくなった。
2: おおむね順調に進展している
情報の整理,情報の最適化,記憶のサポート,注意のコントロールといった支援方略リスト(支援データベース)を作成し,その効果について,公立の小学校,中学校を対象に検証できた。
今後の課題として,学習に困難を示す児童・生徒に個別に焦点を当て,支援方略リストの有効性を更に検証していくことである。
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発達心理学研究
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広島大学 学部・附属学校共同研究機構研究紀要
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